東京・渋谷区の安倍晋三首相の邸宅。お屋敷街の中でもひときわ目立つ豪邸は、1階から3階まで内階段で結ばれた広いメゾネットタイプで、2階が首相夫妻の居室、3階は首相の母で故・安倍晋太郎元外相の夫人、洋子さんの居室になっている。1階には数年前まで首相の兄で三菱商事パッケージング社長の安倍寛信(ひろのぶ)氏の一家が暮らしていた。
政治家や後援者、さらには番記者が足繁く通うこの邸宅から、永田町を揺るがすある情報が発信されていた。昨年の年末、地元・山口の古くからの後援者が洋子さんを訪ねた時のことだ。
「洋子さんがねぇ、眼を細めながらある写真を指さすんですよ。この子にね、晋三の跡を継がせることになったのよ、ってね」
洋子さんが指さしたのはリビングのテーブルの上に飾られていた一枚の写真。安倍家と森永製菓のオーナーの松崎家(昭恵夫人の実家)、そしてウシオ電機オーナーの牛尾家(長男・寛信氏の夫人の実家)との一族集合写真を大きく引き伸ばしたもので、昨年の夏前に撮影されたものだという。
そこで洋子さんが指さしたのは、寛信氏の長男、つまり首相の甥である孫・寛人(ひろと)氏の精悍な姿だった。
「跡を継がせる」とは、首相の祖父の寛氏(代議士)──晋太郎氏──晋三氏と続く安倍家の政治的血脈を引き継ぐ「4代目」が決まったことを意味する。
この後援者は「まさか」と驚いたというが、地元・山口県でも、“お世継ぎ決定”の一報は、一部の古参後援者の間に広がっていた。首相の父・晋太郎氏の代から選挙を手伝い、洋子さんが帰郷したときは、必ず会うという下関在住の後援者が嬉しそうに語る。
「後援会関係者の忘年会や新年会では、洋子夫人から寛人君のことを聞かされたという人がいて、やっと後継者が決まったという話題で盛り上がりました。これまでは、持病を抱える晋三さんに何かあれば、昭恵さんが政治家デビューするんじゃないかという噂があったから、皆でホッと胸をなで下ろしたんです」