国内

都知事選候補者 取材をしたら袋に10万円入れてきたので返却

 都知事選に出馬した候補者は実に16人を数えた。「泡沫候補者」と呼ばれる人たちは、供託金300万円を払ってまで、どうして出馬するのか。ノンフィクションライターの柳川悠二氏がその一人、中川智晴氏に直撃した。(文中敬称略)

 * * *
 都知事選は30歳以上の日本人で、供託金を払えば、基本的に誰でも出馬が可能だ。別に都民である必要はない。それゆえ選挙知識の乏しい者や明らかに経歴が疑わしい候補者が全国から紛れ込む。

 選挙期間中の平日、私は中川智晴(55)という岡山在住の候補者を訪ねた。選挙管理委員会に届け出た選挙事務所は、東京の東端・東陽町のビジネスホテル。連絡先は彼の携帯電話となっていた。

 何より目を引いたのは彼の「どんぶり勘定政策」なるマニフェストだった。だが思いつくままに書き殴った文章はいくら読んでも論旨を掴めない。

「都民に年俸800万円を支給して生活水準を上げるのがどんぶり勘定政策。お金を支給しますから、勤務時間は5時間でいいです。余った時間をエステとか、人の少ないパチンコ屋に入ってあげたり、スナックでワイワイガヤガヤするのもいい」

 実際に会うと、余計に混乱するだけだった。早くこの場を立ち去りたい。そんな気持ちに駆られた。

「都知事選も楽勝だなと思います。話しているうちに、人の関心を感じますからね」

 その後、地下鉄に乗って次の取材に向かおうとしたのだが、帰り際に手渡された茶封筒が気になった。マニフェストが入っていると中川は言っていたが……。封を開けると、なんと現金10万円。私は慌てて引き返し、茶封筒を突き返した。

──前知事が徳洲会との金銭スキャンダルで辞職したというのに、どういうおつもりですか。公職選挙法に抵触しかねない行為ですよ。

「えっ、すみません。雑誌に掲載してもらうには、お金が必要だと認識しておりました」

 中川を擁護するつもりは毛頭ないが、彼に選挙協力を求める「袖の下」の意図はなかったはずだ。単に選挙戦の意味、ルールに無知なだけだろう。どんぶり勘定なのは、彼の訴える政策ではなく、彼の選挙活動そのものだった。

 ちなみに中川は後になってヤバイと思ったのか、釈明のため編集部を訪ねてきた。選挙期間中にそんな時間があるのか。だがさらに呆れたのはその釈明だった。

「(猪瀬氏の)5000万円なら悪いけど、10万円なら問題ないと思ったんですよ」

 泡沫候補とはかくもはちゃめちゃな者ばかりなのか。

※週刊ポスト2014年2月21日号

トピックス

大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン