国民の共有財産といえる羽田空港の新設発着枠が決まった。ANAがJALに完勝した形になったが、背後に何があったのか。ジャーナリスト・須田慎一郎氏が指摘する。
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昨年、羽田空港を舞台に、新たに配分された国際線の発着枠を巡って日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)との間で繰り広げられたバトルは、ANAの完勝だった(ANA11枠に対してJAL5枠)。
「羽田空港の国際線枠は、一枠で年間10億円の利益を確実にもたらすとされる。それだけに、あまりにもANAを優遇する決定は、今後各方面に色々とハレーションを起こすだろう」(霞が関経済官庁首脳)
本来、発着枠に関する許認可権を握っているのは国交省航空局だが、今回は「国交省はほとんどノータッチ」(国交省幹部)だったという。ならばどこが“決定”したのかというと、「主導したのは首相官邸です」(前出の国交省幹部)。
マスコミは気がついていないようだが、前述の“決定”がなされる数か月前、首相官邸内に極秘裏にとある“チーム”が設置されたという。
「“チーム”は単に『勉強会』と呼ばれた。目的は、民主党政権下で進められたJAL再生のプロセスの検証です。メンバーは公認会計士や弁護士などの実務者、国交省の担当者など。ただし事務局は内閣府に置かれ、所管官庁の国交省は手出ししにくい形がとられた」(官邸中枢スタッフ)
この「勉強会」の設置を主導したのは菅義偉官房長官という。
「菅氏が多忙なため、チームのヘッドには世耕弘成官房副長官が就任しました」(前出の官邸中枢スタッフ)
勉強会は官邸内で複数回にわたって開催され、企業再生を得意とする経営コンサルタントや官僚出身の有名大学大学院教授などを招いてヒアリング等を実施したという。
こうした動きを見ると、勉強会は公的な存在であるように見える。にもかかわらず、官邸のホームページにも内閣府のそれにも記載されていないのだ。ましてや議事録の類は一切公表されていない。まるで官房長官配下の隠密部隊なのである。
「実は、この勉強会で羽田空港の新設発着枠の配分が決まったのです。ANAがワンサイドゲームで勝利を収めたのも、その“政治力”のたまものです」(前出の官邸中枢スタッフ)