〈平素は弊社の番組制作に格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。ご多忙の折に恐縮ですが、格別なるご協力を賜りたく、書面にて依頼させていただきます〉〈お願いしたいのは、『週刊ポスト』の表紙の使用許諾です。御誌が特集されている……(以下略)〉
本誌編集部には週に20件程度、各局の情報番組から、記事の内容を番組内で紹介させてほしいという依頼が舞い込んでくる。決して〈番組制作に格別のご高配〉をしているつもりはないのだが、つい先日も、某局の午後のワイドショーのスタッフから、“丁重”な依頼書がFAXされてきた。キー局記者がいう。
「朝の情報番組の場合、独自取材はゼロといってもいい。企画会議はまず、“何か使える記事はある?”というディレクターの声から始まります。ラインアップの95%が雑誌、新聞から頂戴した情報といっていい」
彼らにしてみれば、独自に取材をすれば時間もかかるし、経費もかかる。それを節約できる上に、「……と報じられている」とすれば、記事に誤りがあっても責任を取らなくて済むし、内容を巡って裁判になるようなリスクも負わなくていい。
そうして、彼らはせっせと雑誌や新聞を“取材”して話題を集める。そして、視聴者の目を引きそうなものがあれば、「(報じている媒体に)記事の使用許諾をもらえ」と指示が飛ぶ。
実際、本誌編集部に連絡をしてくるのは、ほぼすべて下請けの制作会社スタッフで、局員ではない。しかも、局から「使用許可を取れ」という指示だけで動いているため、やり取りが覚束ない。半数は明らかにその記事を読んでおらず、こちらが、どのページを使用したいのか尋ねても、「え……」と言い淀む。
挙句の果てに、「雑誌が手元にないんで、画像ファイルで誌面を送ってもらえませんか」と申し出てくる者もいる始末だ。読者に購入いただいている本誌を、テレビ局だからといってタダで渡せるはずがない。
中には取材の過程で複雑な事情があり、記事使用をお断わりせざるを得ない場合がある。そんなケースで先日、先方から驚くべき提案がされた。
「じゃあ、その記事の情報提供者の連絡先を教えてください」
報道に携わる者として、情報源の秘匿はイロハのイである。それを曲げようというのだから、相当な覚悟なのか、それともズブの素人なのか。
※週刊ポスト2014年2月28日号