現在、国民年金(厚生年金の基礎部分)の加入期間は40年と定められている。単純に、20~60歳まで保険料を払い続けなければならないという計算だ。ちなみに、この保険料納付は「強制」である。その納付をめぐって水面下である計画が進んでいる。
厚労省が今年に入り、国民年金について、「加入期間を現行の40年から45年に延ばすことを検討中」だという。つまり、年金保険料を65歳まで強制徴収するということである。
そうすると、何が起こるか。現在、国民年金の保険料は月額1万5000円超程度なので、〈1万5000円×12か月×5年〉で、国民1人当たり約90万円の保険料負担増となるのだ。
その結果、現行のルールのままであれば、年金受給額は月々8000円増えることになるが、それでも保険料増分の元を取るには10年近くかかる計算となる。「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏はこう指摘する。
「厚労省は、『65歳までの雇用確保が軌道に乗ったこと』を検討理由にしているようだが、60~65歳の人たちがどんな働きをしているか、その実態を知っているのかと強くいいたい。
60歳までの年収の3分の1は当たり前。60歳から年金の繰り上げ支給を選択し、それでもギリギリの生活をしている人がたくさんいる現実をみれば、65歳までの追加徴収など到底無理です。
ようするに、年金運用が非常にヤバくなったので、政府は『年金をもらいたければ、65歳まであと90万円払え』と言い出すつもりなのでしょう。
年金官僚からしてみれば、5年延長が可能になれば、現状より12.5%も多く保険料を集められることになる。だが、その一方で高齢者の生活は、さらにお先真っ暗になるのは間違いありません」
※週刊ポスト2014年2月28日号