レンタルビデオ店などに足を運べば、そこにはおびただしい数のアダルトビデオが陳列されているが、そこに出演している男優や女優に注がれる目は、お世辞にも温かいとは言いがたい。AV男優たちは、自らの生業にどう向き合い、息子や娘たちにどう伝えているのだろうか。
田淵正浩さん(46歳)も、キャリア25年のベテランAV男優だ。端正な容貌を生かした銀行員役などのほか、温泉旅館の番頭やヤクザ役まで幅広くこなし、AV界の演技派として名高い。出演本数は1万本に達する。
「僕には5歳になる娘がいます。妻は、結婚前からAV男優だということを知っていますが、娘にはまだ話していません」
それどころか、田淵さんは自分の仕事を隠せるだけ、隠しておきたいという。
「でも、娘はもう幼稚園児ですからね。『パパのお仕事ってなに?』という質問をしてくるんですよ」
そんな時、田淵さんはこう答えている。
「パパは人とお話しして、お金を稼いでいるんだよ」
嘘をつきたくて、ついてるわけじゃないんです──田淵さんは胸のうちを吐露してくれた。
「僕は好きでAVやってますから、後ろ指をさされても構わない。だけど、娘にまで被害が及ぶのは耐えられないんです」
やはり、そこには世間のAVに対する蔑視や偏見が横たわっている。ベテランAVライターはいう。
「あるベテラン男優は、娘さんが結婚する際に、『親子の縁を切ってくれ』といわれたそうです」
別の男優の高校生の娘も、父の職業を知ってグレはじめ、ここ数年は音信不通。
「男優や女優のお子さんが学校でいじめられるパターンはけっこう多い。中には、子どもが自殺未遂したケースまであります」(同前)
田淵さんも、「娘の友達や妻のママ友からオレの仕事がバレたらどうしよう」という心配と常に背中合わせだ。
「だから、娘の幼稚園や妻の友人たちには極力近づかないようにしています。運動会に行く時は、メガネと帽子で変装して出かけるようにしているくらいです」
そうまでして、なぜAV男優という仕事に執着するのか。
「正直いうと、仕事でするセックスであっても、プライベートと同じくらいに気持ちがいいんです。それでギャラがいただけるのは、ありがたいことですよね」
ただ、彼は強調する。
「だけど、AVでのセックスはしょせん肉体だけの快感。心までは満たされません。だから、僕はプライベートでは女性とたくさんおしゃべりやスキンシップをして、互いのハートを理解し合うように努めています」
※週刊ポスト2014年2月28日号