愛知県の中学生が物語の設定を詳細に検証し、「メロスは歩いていた」としたレポートが理数教育研究所主催のコンクールで最優秀賞を受賞して話題となったが、日本文学には『走れメロス』のほかにもツっこみたくなる矛盾がまだまだある。気づいてみると「あれっ?」と首をかしげたくなるような表現もある。
宮澤賢治の『雨ニモマケズ』はいうまでもなく彼の代表的な詩であり、その清貧の志は、今なお多くの人の胸を打つ。そんな名作にツッコミを入れるのは、日本大学芸術学部(文芸)の大和田守講師だ。
「《雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ》と始まるこの有名な詩では《慾ハナク》の例として《一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ》とあります。清貧について詠まれているのに、この量はなかなかのものです」
米1合でだいたい茶碗2杯分。4合なら茶碗8杯分。いくらおかずが少ないとはいえ、1日3食として1食あたり約2.7杯の玄米を平らげるとはプチ贅沢の部類に入るのでは。
同じ疑問は昔からあったようで、戦後の食糧難の時代には、この詩を教科書に記載する際に玄米の量について「四合」から「三合」に改められたという。
※週刊ポスト2014年3月7日号