日本以上に高齢化が進行している韓国ではOECD(経済協力開発機構)加盟34か国中、65歳以上の高齢者貧困率がもっとも高いだけでなく、世代を問わず貧困層の拡大が進んでいる。
たとえ貧しい家庭に育っても、子供たちが夢や希望を抱ける社会であれば救いがある。しかし、現実はシビアだ。
「熾烈な受験戦争に勝ち抜き名門大学に進学しても、人並み以上の生活ができるとは限らない。貧困層は就職でも差別を受ける。履歴書に親の学歴の記入を求められることも少なくない。
企業側は『あくまで参考』というが、貧困層の親はまともに学校を出ていないことが多く、それを理由に選考対象から外されてしまうのだ。特に大企業では学生の出自が重視される。こればかりは努力で埋めることができない」(韓国紙記者)
韓国の大学生の年間中退者数は9万人(日本は約6万人)に上る。一般的な4年制大学の授業料700万ウォン(約66万円)を支払えない学生が多いからだ。仮に卒業しても、就職できるのはわずか56.2%(2012年度)に止まる。
学費の捻出ができず、カードで借金を重ねる学生も少なくない。韓国・金融監督院の2011年調査によると、韓国の大学生の6人に1人が貸金業者から借金している。用途でもっとも多いのは学費への充当だ。ある大学で教鞭をとる日本人講師は語る。
「せっかく苦労して入学したのに、『まとまったお金を稼ぐため日本に行きたい』と長期の休学を申し出る学生がいる。留学ビザが取りやすく賃金も高い日本を目指す学生は多い」
大学卒業後、職を得られなかった男性(30歳)は、運転代行のアルバイトで食いつないでいる。
「就職浪人を続け、気づいたらこの年になっていた。深夜は酔客も多く、絡まれることもある。一流企業に勤める同世代の客に横柄な態度を取られ、言い合いになったこともあった。情けなくて涙が出た」
貧困と歪んだ社会構造が将来ある若者たちの芽を摘んでいる。
※SAPIO2014年3月号