民主党政権時代に崩壊した日米同盟を甦らせる──就任間もない安倍首相は、高らかにそう宣言した。しかしそれから1年、日米関係は「最悪の民主党時代」よりも危機的状況にある。靖国参拝、首相側近の相次ぐ米国批判発言などを目の当たりにした米政府高官からは、非難の声さえ上がり始めた。
対日関係にかかわる中国政府当局者は、「米国が日本を見捨てることはない」としつつも、こう話す。
「靖国参拝は、明らかに中国にとっては『助け舟』となり、米国とともに日本批判をする口実を与えてくれた。靖国参拝以降、中国政府が比較的大人しいのは、米国側の非難が激しいから。私は米国側が『安倍降ろし』に動き、安倍政権がそれほど長く続かないとみている」
米国のメディア事情に詳しい在米ジャーナリストの北丸雄二氏も安倍降ろしの可能性を指摘する。
「安倍首相を捨てるか、否か。その転換点が4月です。消費増税が日本の景気と安倍政権への支持率にどう影響するか、そしてオバマ大統領来日に際して日本はどんな対応をするか。冷静に米国政府は分析しているでしょう」
日本政府の喉元に突きつけられた米国の匕首(あいくち)は、“日本外し”、さもなくば“安倍降ろし”──。ただし、その回避策は「米国に隷属せよ」というものではない。
目下、韓国では米軍基地が縮小方向にあり、台湾も中国と融和政策をとりつつある。日本のサポートがなければ米国は東アジアに“存在”すらできなくなる。元防衛事務次官・守屋武昌氏が語る。
「中国の膨張主義が顕著になるなか、米軍の部隊を配備でき、その経費負担に加えて、自衛隊の防衛協力をより深めようとしている日本のプライオリティは今後ますます大きくなる。米国の安倍政権批判も、その真意は『中国がどういう戦略をとってくる国なのか学び、もっと慎重になってくれ』というものでしょう」
※週刊ポスト2014年3月14日号