今年を「南北統一時代の幕開け」とハデに煽る韓国政府に引きずられるように、メディアなどでは南北統一の経済効果を試算したシミュレーションがいくつも登場。沈鬱気味だった韓国国内のムードが一気に明るくなっているという。
なかでも注目を集めたのが、今月4日、韓国最大の日刊紙『朝鮮日報』が主催した「アジア・リーダーシップ・コンファレンス」で示された驚きの予測だった。
同会議には米ウォール街の投資家やドイツの大学教授など各国の識者が出席。朴槿恵(パク・クネ)大統領が主張する南北統一が韓国にどのような効果をもたらすかが検討された。その結果、次のように予測されるという。
●韓国の株式市場を大幅に成長させることができる
●韓国社会の高齢化を15年遅らせることができる
●年間1億人に達する中国への観光旅行客が、統一韓国に大挙して流れてくるようになる
●2兆~4兆ドル(206兆~412兆円)の価値があるとされる北朝鮮の地下資源を確保できる
さらに、米金融グループ「ゴールドマン・サックス」のクォン・グフン専務が「10~15年後には統一韓国の経済規模がフランス、ドイツと同等にまで拡大し、今の世代で日本に追いつくことができる」と分析してみせた。統一によってバラ色の未来が韓国を待っていると説いたのだ。
その予測の信憑性はともかく、朴氏がぶち上げる統一論のミソは、韓国側が統一にかかる経費を日本に負担させることを前提にしている点だ。同会議では統一費用に400億ドル(4兆1200億円)の負担が生じるとし、なぜか100億ドル(1兆300億円)分は日本が拠出することになっていた。
もちろん、日本側と合意のある話ではなく、韓国側が勝手に前提に組み込んでいるだけだ。韓国事情に詳しい評論家の室谷克実氏がその背景を解説する。
「日本人には理解しがたいですが、韓国はいまなお“日本は韓国に対する戦後補償を完全に果たしていない”という思いを持っている。1965年に締結された日韓基本条約で最終的に解決されている話なので、韓国国内でしか通用しない論理なのですが、何か自分たちの手に負えない事態が起こった際には、“日本に頼って当然”となる」
※週刊ポスト2014年3月28日号