政府は賃上げを煽る一方、リストラを奨励している。そんなバカな、とお思いかもしれないが、3月から政府の「リストラ奨励金」が拡充されたのだ。制度の正式名は「労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)」という。
簡単にいえば、解雇者を人材紹介会社に送り、再就職が決まれば、リストラされたほうではなく、解雇した企業が助成金をもらえるという制度。これまで中小企業のみに支給されていたが、3月から大企業も対象となる。
予算規模は2億円程度だったが、「失業なき労働移動の実現」という名目で、今回、約300億円にまで大拡充された。
内容も強化されている。従来は再就職が決まった時点で支給していたが、今後は、人材紹介会社に委託した時点で一人につき10万円の助成金を企業がもらえ、さらに、そのリストラ者の再就職が決まれば、最大で60万円の助成金を企業が得ることになる(助成金は再就職先も得られる仕組み)。
ちなみに、再就職実現の助成金はリストラから6か月以内に決まった場合が対象だが、45歳以上だと9か月以内と期間が長くなる。45歳以上をリストラしやすい設計となっている。
助成金は企業が人材紹介会社に委託した時点で発生するため、実際は人材紹介会社に回る。そこには、こんな背景も囁かれている。
「安倍首相のブレーンである竹中平蔵氏は人材紹介会社パソナの親会社会長で、アベノミクスの労働規制改革でも発言力を持っています。今回の制度改革も、労働規制改革の流れで出てきたものです」(政府関係者)
リストラする企業にも、再就職をあっせんする企業にも、それぞれに旨味のあるこの制度。唯一にして最大の問題は、リストラされる労働者だけが、その恩恵に与れないということだ。
※週刊ポスト2014年3月28日号