原発事故の避難者2万人以上を受け入れている福島県いわき市では、原発事故からの避難者を約2万人受け入れた。今、いわき市はどんな状況か──実情をフォトジャーナリスト・いたがき秋良氏がレポートする。
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昼の街でもさまざまな恨み節が聞こえてきた。市中心部のショッピングセンターで買い物をしていた小さな子連れの夫婦は「人が増えて混むから遠くの店に買い物に行くこともある」という。
震災後のいわき市は、避難者に加え復興関連作業員が大挙して流入し、3万人近い急激な人口増加が起きた。混乱が起きるのは当然だ。震災前に2万件の空きがあった賃貸物件はあっという間に埋まり、なお不足が続いている状態だという。
県道沿いにある不動産屋を訪ね、担当者に聞いた。
「確かに避難者は物件を押さえるのが早いですね。慰謝料や賠償金でまとまったお金があるから躊躇いなく決められるのでしょう。震災前からじっくりと物件を選び計画を立てていた地元の人が煽りを受けていることは否めない。同じいわき人として理不尽さを感じることもありますよ」
場所によっては地価が2倍以上に跳ね上がったケースもあるという。
市内のある総合病院では、混雑による待ち時間が増加し、震災から3年経った今も解消されていない。受付に聞くと、いずれの科でも「会計を含めて3~4時間は見てほしい」と言われた。
特に患者の多い整形外科は、原則として紹介状のない患者は救急患者以外受け付けていないという。薬の順番待ちをしていた高齢の女性は諦め顔でぼやいた。
「私は整形外科と内科にかかっているから半日がかりだよ。予約しても時間通りにはならないの。もう慣れたけどね。むしろイライラしているのは避難してきた人たちだね。『いつまで待たせてんだ』って文句言ってるから、『この辺の病院は人が増えたから仕方ないよ』と諭したこともある」
土日ともなると、幹線道路沿いの飲食店はどこも一杯で駐車すらままならない。立ち寄ったファミリーレストランは午後2時を過ぎても10人以上が列をなしていた。
※SAPIO2014年4月号