「福島の復興のためには、まず除染が必要だ」──政府の掛け声のもとに莫大な予算が注ぎ込まれている。
放射性物質を取り除くための除染作業の予算は震災直後に組まれた2011年度補正予算での2459億円を皮切りにどんどん金額が積み増されていった。2014年度予算案には4924億円が計上され、これまでの総額は1兆8899億円にのぼる。この金額はまだまだ膨れ上がる。作業が全く計画通りに進んでいないからだ。
放射性物質汚染対処特措法に基づく除染事業は2つに分かれる。国が直轄事業として除染を行なうのが、「除染特別地域(福島第一原発に近い11市町村)」。
それ以外で放射線量が年間1ミリシーベルト以上(自然界から受ける放射線量を除く。以下同)の「除染実施区域」については自治体が除染する。国は年間1ミリシーベルト以下にすることを目標に掲げている。
当初、国が直轄で除染を行なう地域はこの3月末で作業が完了する予定だった。しかし昨年末に環境省は期限の大幅延長を発表。南相馬市など4市町村について2017年3月末までを期限とする予定に組み直した。
自治体による除染も同様で、福島県内では作業の実施率は住宅地で約40%、道路で約30%、森林で約20%といった低い数字が並ぶ(2013年12月末時点)。
専門家の間では1ミリシーベルトにするにはさらなる期限の延長が必要との見方もあり、産業技術総合研究所のグループは除染にかかる総額を5兆円以上と試算した。
※SAPIO2014年4月号