「小松(一郎)さんは一体、どうしちゃったんだ?」
官僚にとって最大の名誉職といわれる内閣法制局長官が、国会議員と廊下で口げんかという前代未聞の事態を巻き起こしたことで、官邸内に波紋を呼んでいる。
がん闘病から職場復帰し、「命に代えても、憲法解釈変更は私の手で成し遂げたい。何卒私の任を解かないでほしい」と安倍首相に訴え、首相を「小松さんは戦死の覚悟だ」と甚く感動させたという美談も今は昔、もはや小松氏は「政権の問題児」となりつつある。
発端は3月4日、共産党議員から「政権の番犬」と揶揄されたことに、小松氏が「国家公務員にも人権がある」と反論したことだった。後日、別の共産党議員と国会の廊下で「あなたはそんなに偉いのか」「偉くはないが人権はある」などと口論に。
その後、小松氏は議員のもとを謝罪に訪れたが、「辞任して療養に専念すべきだ」という発言に再び激昂、「そういうことは言うべきでない」と激しく反論する泥仕合となった。
今や「キレる中年」のように扱われている小松氏。知己の日本維新の会政調会長、片山虎之助氏は、最近の彼の様子を訝しむ。
「私が国対委員長だったころ、彼は外務省職員としてよく出入りしていたが、昔と比べていまは異常にハイテンションで、普通とは言えないでしょう? それで国会で会った時、『あなたは長官になって、気負っているのか? あるいは病気療養中で、病気や薬服用の関係があるのか?』と聞いたんだ。けど小松さんは、『いいえ、そんなことはありません』と否定しとったよ」
では、いったい何が原因なのか。外務省関係者が推測する。
「実は外務省条約畑の世界では、小松さんは『皇帝』と呼ばれるほどの権力者だった。いまTPP(環太平洋経済連携協定)交渉を担っている大江博・内閣審議官は『大王』と呼ばれていたが、その呼び名の彼ですら『皇帝』には及ばなかった。
日ロ首脳会談に同席した際、プーチン大統領に『バウリンガル』(犬語翻訳機)をプレゼントしたのは有名な話。相当な権力志向があって今があるはずです。『皇帝』と称された自分が、『番犬』呼ばわりでは、そりゃ怒りますよ」
地位に固執したのは、使命感だけが理由ではなかったのかもしれない。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号