不眠症状は寝付きが悪い、眠りが浅い、途中で目が覚める、熟睡感がないなどだが、これだけでは不眠症ではない。夜間の不眠症状に加えて、日中の猛烈な眠気やだるさなど、心身の機能障害やQOL(生活の質)の低下を伴い、はじめて不眠症と診断される。不眠は加齢やストレスのほか、痛みやかゆみ、心肺の病気による息苦しさ、薬の副作用など様々な原因で起こる。
治療には睡眠薬が処方され、今や成人の約20人に1人、60代以上では約7人に1人が常用しているといわれる。処方箋薬以外にも市販薬や漢方、サプリメントなど眠るための薬を求めている人は多い。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、精神生理研究部の三島和夫部長に話を聞いた。
「不眠症は、早期に適切な治療をすれば治ります。2500人を対象にした睡眠薬の服薬調査によると、7割の方は3か月で服用が終わります。1年以上の服用は約2割ですが、一部の睡眠薬は服用が半年から8か月を超えると、依存症になる率が高くなるので、漫然と服用し続けるのを改める必要があります」
現在、新しいタイプの睡眠薬として、非ベンゾジアゼピン系やメラトニン受容体作動薬が登場。安全性が高く薬物依存が起こりにくいが、ベンゾ系を使い慣れている医師が多いのか、新しい薬の使用は全体の約25%にとどまったままだ。
無理に寝ようとするとかえって不安が増し、不眠恐怖が不眠症を増悪させる。睡眠の質や時間に一喜一憂することなく、むしろ睡眠のニーズが高まる生活スタイルを維持することも大切だ。「眠れさえすればできる」ではなく、「今できることからやる」のがポイントだ。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2014年4月4・11日号