いつの時代も、日本人の健康に対する関心の高さは変わらない。健康関連には一つのブームを巻き起こすものもある。そのうちのひとつが、1970年代半ばに一世を風靡した健康食品が紅茶キノコだ。特殊な微生物(いくつかの菌の集まり)でできたゲル状の固まりを砂糖とともに紅茶に漬けて2週間近く発酵させ、その培養液を飲む。ゲル状の固まりがキノコのように見えることからこの名がついた。
もともと長寿地帯として知られる、シベリア地方のバイカル湖近くの農村地帯で伝統的に愛飲されてきたもので、特に血圧やコレステロールの低下に効果があるという。「紅茶キノコ研究家」の中満須磨子氏が日本に持ち込み、1974年に『紅茶キノコ健康法』という本を出版。
それに目をつけた『壮快』編集長の牧野武朗が、1975年5月号の誌面で取り上げた。薬草特集の中の1本という小さな扱いだったが、前後してテレビ、新聞、週刊誌なども相次いで取り上げたことで一気にブームとなった。人々はメーカーによって商品化されたものを買うのではなく、友人知人、職場や近所の人から分けてもらった・キノコ・を培養した。
その後、日本でのブームは終わったが、意外な場所で紅茶キノコは今も生き続けている。アメリカである。マドンナらセレブの間で、緑茶と並んでKombucha(コンブチャ)なるものがダイエットドリンクとして人気なのだが、その正体は紅茶キノコなのである。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号