今から65年前の1949年、戦後最多となる約270万人の新生児が日本で誕生した。そして今年4月、1947~1949年に生まれた「団塊」という世代が全員65歳を迎えリタイアする。彼らについては、高度経済成長を支えた年代という評価がある一方、「分かち合うよりも自分の生活向上重視」「自己顕示欲が強い」という評価があるのも事実。そうした団塊世代の特質をひとことでいえば、「マイホーム主義」だ。
地方から都市に出てきた団塊世代にとって、最大の目標が郊外に土地付き一戸建てを持ち、ピアノを持って犬を飼う生活だった。また、学歴社会で苦労したから、「学歴さえあれば生活には困らない」という自分たちの価値観で子供の教育に力を入れ、習い事をさせ、大学に進学させた。
67歳の元公務員は、「自分が高卒で苦労した分、子供には小学生の頃から学習塾に通わせた。大学にも進学させて就職活動もうまくいった」と誇らしげだ。しかし、いまや学歴で親を超えても、生涯賃金は親を超えられない社会となった。子供世代が自分の力で稼ぎ、生活を守っていけるような社会の変革には取り組もうとしなかったのである。
「マイホーム主義」とは自分たちの生活、年金など既得権さえ守られればいいという発想そのものだ。焼け跡世代の評論家・屋山太郎氏(1932年生まれ)は、団塊世代の責任は「日本の官僚支配や既得権体質を変えようとしなかったことだ」とこう指摘する。
「彼らが生まれてすぐは食糧不足の時代。食い扶持を稼ぐために一致団結して働き、高度成長を支えたといえる。しかし、常に国から自分たちに必要な政策をあてがわれてきたから、目の前にある制度の矛盾に疑問を持たず、既存の制度の中で物事を判断する傾向が強い。お上がなんとかしてくれると官僚支配を強め、必要な改革を遅らせてきた」
それはバブル崩壊への対応でもいえる。競争社会で“勝てば官軍”でやってきたこの世代は、守りにはからきし弱い。バブル崩壊後、日本の経済や社会は、高度成長期につくられた年金制度などの抜本的改革を迫られたが、手をつけようとしなかった。
そうしたなかで、実は、当の団塊世代だけは他の世代より多くの金融資産を貯め込んでいる。1970~1980年代は給料が右肩上がりで家計の貯蓄率は最高20%にのぼっていた。つまり、給料の2割を貯金できたのだ。
そのため日本の個人金融資産(約1400兆円)のうち130兆円、1人平均約2000万円の金融資産をこの世代が持っているといわれる。資産は多く、年金もたっぷりなのに、借金は後の世代に付け回しという「勝ち逃げ世代」なのだ。
※週刊ポスト2014年4月18日号