中国情報専門のインターネット・ニュースサイト「多維新聞網」は世界最大の水力発電ダムである中国の三峡ダム建設・管理に絡む腐敗事件に関して、中国当局が捜査のメスを入れたと報道。三峡ダム建設を強力に推進した李鵬・元首相や側近にも捜査が拡大する可能性があると報じた。すでに、周永康・元党政治局常務委員が腐敗容疑で身柄を確保されていると伝えられており、李氏周辺にも捜査の手が伸びれば、中国政治が混乱する可能性が出てくる。
中国では三峡ダムを管理・運営する中国長江三峡集団の会長と社長が3月下旬、同時に更迭されるという異例の人事が発令された。理由は公表されていないが、習近平体制発足後、腐敗問題摘発の強化が背景にあるとみられる。
同集団をめぐっては、党内の不正を取り締まる党中央規律検査委員会が昨年10月から2か月間、同集団の本社などを徹底して捜索しており、2月中旬に、その結果が公表されている。それによると、幹部とその親戚、知人らが建設プロジェクトの入札に関与したり、業者に賄賂を要求するなどの、不正行為が頻繁に行なわれていた。
中国誌「時代週報」は入札に関わった企業関係者の話として、「正常な手続を経て行なわれた入札は一回もなかった」や、「すでに退任した幹部も不正に関わっていた」と報じている。
香港誌「アジア週刊」は党幹部の話として、中央規律検査委は「退任した老幹部も捜査の対象」にしていると伝えており、その「老幹部」には李鵬・元首相も含まれていると明らかにしている。
李鵬氏は三峡ダム建設の陣頭指揮をとるなど、三峡ダムと深く関わっているほか、息子と娘はともに電力会社のトップを務めていた時期があるなど、“エネルギー関連ファミリー”であるのはよく知られている。しかも、三峡ダムの建設・管理費用を賄う1374億元(約2兆3358億円)ものダム基金の大半を私物化したほか、三峡集団傘下にある長江電力グループが香港市場に上場した際、息子や娘の会社に加えて、李鵬氏の妻が経営する会社も同グループの株式を大量に購入し、巨額の利益を手にしていたとの疑惑が囁かれている。
すでに、息子や娘は電力会社を離れているものの、中央規律検査委の捜査が本格化すれば、李鵬氏ばかりでなく、ファミリー全体が取り調べの対象となることは必至だ。しかも、多維新聞網によると、李鵬氏が首相時代、党総書記だった江沢民・元国家主席もこの件への関与を取り沙汰されているだけに、中国全体を揺るがす大きな混乱が起こることも考えられる。