犬の長寿化に伴い、重い病気を患う犬も増える。そんななか、最新の専門技術を身につけ、腕を磨き続ける、頼もしい“名医”も登場している──。
「脳神経の病気や障害の治療において、世界の誰かに治せて、自分が治せないものがないように、切磋琢磨しています」
力強くそう語るのは、アツキ動物医療センターの院長・井尻篤木さん。きっかけは、脳腫瘍が見つかった犬の飼い主からの「治してほしい」という切実な言葉。なんとかその期待に応えたいと滋賀医科大学の門をたたき、まず人の医療の脳神経外科を学ぶことからスタートした。
現在、同センターには先進的な設備を導入。顕微鏡を使ったマイクロサージェリー(超微細手術)で、肉眼ではできない細かい施術も可能にした。また、事前の検査だけでなく、手術中にもCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像法)で画像を撮影し、常に最新の状態を確認しながら行う最先端の手術法を用いている。
さらに、京都大学との共同研究プロジェクトでは、3Dプリンターで人工骨を製作する実験に取り組み、脳腫瘍と診断されたフレンチブルドッグの手術では、腫瘍摘出後、3Dプリンターで作ったインプラントで頭蓋骨を修復した。
「獣医療は飼い主の切実な希望のもと発展していきます。われわれはその気持ちに応えられるよう、情熱をもって励んでいます」と語る井尻さん。世界中が注目する脳神経外科のパイオニアとして、日々邁進している。
※女性セブン2014年4月24日号