ベビーカーに子供を乗せた親が気兼ねなく交通機関などを利用できるようにと国土交通省が統一マークを発表した。これで利用しやすくなったという人がいる半面、「ラッシュ時の使用は避けてほしい」、「ママたちのモラルをあらためて求めたい」という厳しい声も。しかも、それは同性である女性からあがっているのだとか。議論百出のベビーカー問題を考える。
「今までエスカレーターなど、ベビーカーを使用すると危険な場所に表示されるマークはありました。でも、利用できる場所などを明示する統一マークはなく、各事業者が独自に設定していました。今回設定したマークが日本標準として浸透してくれたら、と思っています」
中央大学研究開発機構教授で「日本福祉のまちづくり学会」会長の秋山哲男さんは、そう説明する。
国土交通省は、昨年6月に「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会」を設置。ベビーカーを利用しやすい環境づくりに向けた検討を重ね、3月26日に「ベビーカーマーク」を選定した。
だが、ベビーカーマークを設置することに、違和感を持った人もいる。作家の吉永みち子さんはこんな懸念を持っている。
「本当は、こんなマークがなくても、利用者が肩身の狭い思いをしなくてすむような社会であればいいんだろうけど、なかなかそうはいかないもの。だから、マークを作っただけで終わってしまわないか、私は心配しているんです」
というのも、今回のマークは、今後各事業者がそれぞれ対応するため、設置したことで新たな問題を生む可能性があると吉永さんは言う。
「例えば、車両のどこそこに固定場所を作るといった統一ルールがあれば、まだいいのですが、それは各社にゆだねられている。私がもし、ベビーカーを利用する立場だったら、マークを探して移動すると思いますが、ルールや場所づくりの義務化をしないままマークだけを作ると、今度はマークがないところで、ベビーカー使用を巡るトラブルが起こる危険性が生まれますよね。
このマークをいかにうまく生かすかを、もう少し慎重に考えてから世の中を動かさないと、今でもベビーカー利用者は肩身が狭いのに、優先場所を作ることで、さらに利用場所を狭めることになりかねないと思うんです」(吉永さん)
※女性セブン2014年4月24日号