「飛行中のヘリがマンションに激突」。今冬、ソウル市内でヘリコプターが高層マンションに激突し、搭乗していた2人が命を落とした。それ以上の人的被害は免れたが、現場は高級ホテルや大規模コンベンションセンターのすぐ裏手で、大惨事となる可能性があった。市民にとってより衝撃的だったのは、大気汚染による視界不良が大きな要因であったことだ。
汚染が特にひどかった1月17日には視界が真っ白になるほどのスモッグに覆われ、ソウル金浦空港では国内線数十便が欠航。冬の風物詩として知られるソウル市庁舎前の屋外スケート場は今シーズン、大気汚染を理由に何度も閉鎖された。大型スーパーではマスクや空気清浄機が飛ぶように売れ、緑茶や各種の韓国茶、トラジ(桔梗の根)など、「喉や気管支に良い」と噂になっている食品まで売り上げを伸ばしている。
ソウルでの大気汚染騒動について米紙ウォールストリート・ジャーナルは「犯人は焼き肉店と共同浴場?」と題し、2014年から市内1万店の焼き肉店と1000軒を超える共同浴場が汚染物質排出施設として規制されると報じた(2月5日付)。市は排出基準を超過した施設に罰金を科すとともに、濾過フィルター設置に補助金を出す方針を発表した。
1970~1980年代、韓国では工業化が進むとともに深刻な公害や生活環境問題に直面した。政府は1990年代にかけて汚染物質の排出企業などを対象に賦課金政策を進め、2003年にはソウル、仁川など首都圏の大気の質を先進国レベルに引き上げるため排出総量規制を導入。それらの対策により大気は一時、それ以前よりかなりきれいになった(それでも東京に比べると劣悪だったが)。
※SAPIO2014年5月号