日本全国に様々なご当地うどんがあるが、コラムニストの石原壮一郎氏が注目しているのが、三重県の「伊勢うどん」だ。世界初の公認「伊勢うどん大使」を務め、著書に『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)もある同氏が、伊勢うどんの魅力について解説する。
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世の中はどんどん世知辛くなり、人間関係も何だかギスギスしています。しかし、悲観する必要はありません。私たちには伊勢うどんがついています! 日本一太くて日本一やわらかくて、そして日本一やさしい──。そんな伊勢うどんが私たちを、世界を救ってくれます!
伊勢神宮が20年に一度の式年遷宮を迎え、史上最高の参拝客が伊勢を訪れた去年は、伊勢うどんにとっても大きな飛躍の年でした。メディアに頻繁に取り上げられ、ご当地うどんブームの盛り上がりにも後押しされて、「伊勢に行ったら伊勢うどんを食べなきゃ!」という“常識”が広く定着したのです。
400年以上前に生まれた伊勢うどんは、江戸時代から伊勢神宮の参拝客に親しまれてきました。長旅で疲れている旅人の胃に負担をかけないように、また、次々とやってくるお客さんをお待たせしないですぐ出せるように、太くてやわらかい麺にタレをからめるスタイルが発達したと言われています。いわば元祖ファストフードであり、器の中には伊勢の「おもてなしの心」が象徴されているといっても過言ではありません。
離乳食から始まって、人生のあらゆる場面で伊勢うどんを食べている伊勢の人々は、まさに伊勢うどんのように、コシがやわらかくて当たりもふんわりとしています。遠い昔から伊勢神宮とともに生きてきた誇りをベースにしつつ、寛容で懐が深い伊勢うどんスピリッツを体現していると言えるでしょう。
そう、伊勢うどんのおいしさを知ることで、私たちは多くのことを学べます。「うどんはコシが命」という思い込みが打ち砕かれた瞬間、多様な価値観が存在する大切さや、人生も世の中も正解はひとつではないと気づけるはず。コシをなくすことが深くからまり合う秘訣だという人間関係の極意も、伊勢うどんは身をもって教えてくれます。
そんな伊勢うどんスピリッツがもっともっと広まれば、世の中はいい方向に変わっていくはず。遷宮の翌年の今年は、ひときわご利益が増すと言われる「おかげ年」。伊勢を訪れて、あるいはお取り寄せなどで、ぜひ伊勢うどんをご堪能ください。その出会いが、あなたの人生を、そして世界を変えます!
写真提供■京都祇園 うどんミュージアム
※週刊ポスト2014年5月2日号