安倍首相が突き進む憲法改正は、いよいよ最終段階に入りつつあるようだ。ジャーナリスト・須田慎一郎氏が指摘する。
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安倍首相を取り巻くタカ派の“おトモダチ”グループが、いよいよ公明党切りに動き出したようだ。
おトモダチが活動の拠点としているのが、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇・柳井俊二座長)だ。安保法制懇は安倍首相の私的諮問機関で、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を可能とすることを目的とした「答申」の取りまとめ作業を進めている。
「作業はいよいよ最終段階に入っている。安倍首相はこの『答申』を受けて、これを閣議決定し、事実上の解釈改憲の実現につなげる方針です」(官邸中枢スタッフ)
しかし首相の思惑に対して、障害になりつつあるのが公明党の存在だ。
「現時点で公明党は解釈改憲に絶対反対の立場です。そのため安保法制懇の会合では公明党批判が噴出しているのです」(前出の中枢スタッフ)
批判の急先鋒が、北岡伸一座長代理(国際大学学長)だ。
「座長を務める柳井氏がハンブルグ在住のため(柳井氏は同市にある国際海洋法裁判所長のポストにある)、北岡氏が全面的に懇談会を仕切っています。その北岡氏が懇談会の席上、『安倍首相は公明党との連立解消をそろそろ決断すべきだ』と言ってのけたのです」(安保法制懇メンバー)
取材に対して北岡氏は「そのような事実はまったくない」と否定したが、前出の懇談会メンバーは「今回が初めてではない。これまでも北岡氏はシンポジウムなどで同様の発言をしてきた」と証言する。
北岡氏は第一次安倍政権時代、日本版NSC設置へ向けて奔走するなど、安全保障政策に関する首相の最有力ブレーンと言うべき立場にある。
国会論戦を何かと騒がしている小松一郎内閣法制局長官もこの北岡─柳井ラインに連なる人物だ。
「小松氏は、柳井氏が外務省条約局長、駐米大使時代に部下として仕えていた。柳井氏に対して頭が上がりません」(外務省有力OB)
布陣を見る限り、安倍首相が解釈改憲に向かって突き進む意志は固い。
「そしてそれは米国のジャパン・ハンドラー達、カート・キャンベル前国務次官補、リチャード・アーミテージ元米国務副長官らの描いたシナリオでもあるのです」(前出同)
だとすれば公明党との連立解消も、米国の意向と見ることもできる。
※SAPIO2014年5月号