「なんで助けてくれないの」と泣き崩れる母親に、「何千人でも投入して今すぐ助けろ」と怒鳴る父親……高校の修学旅行生ら数百人規模の犠牲者を出した韓国のセウォル号沈没事故は、日本にも大きな衝撃を与えた。とりわけ日本人にとって印象的だったのは、被災者の家族らがこのように、あたりもはばからず、激しく号泣する姿だった。
家族らの激情は、政府への怒りに転化し、慰問した朴槿恵大統領に対して「嘘つくなこの野郎!」「こんなところに来ないで早く対策を立てろ!」と罵声を浴びせるほどだった。
「自分にはここまでできない」──おそらく多くの日本人がこう思ったはずだ。3年前の東日本大震災では、被災者や遺族らが心痛を押し隠す姿、不平を洩らすことなく耐え忍ぶ姿が目に付いた。
人災としかいいようがない今回の沈没事故と、地震・津波という自然災害とではもちろん比較はできないが、日本では、こういった事態に際して感情を抑え、「気丈に振る舞う」ことが美徳とされてきた。震災当時、韓国人らは逆に、「なぜ日本人は泣かないのか」と驚いたという。
この違いはどこから生まれるのか。これは決して、どちらが良い・悪いという話ではない。両国の間の文化的ギャップが、象徴的に現われているのである。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号