中国では北京などの大都市で、病院の治療などに不満を持つ患者や家族が医者らを襲う「医療暴力」が問題になっており、全土で年間7万件に上っている。なかには、医師が殺される事件まで発生しており、自衛のために医療関係者らが立ち上がり、「ガーディアン・エンジェルス」なる自警組織を創設し、モンスターペイシェント(≒非常識過ぎる患者)に立ち向かっている。
中国メディアによると、中国の東北部、黒竜江省チチハルで今年2月、19歳の男が耳鼻咽喉科の医師を撲殺。上海では3月、68歳の男が医者と看護師に刀で重傷を負わせた。江蘇省でも3月、45歳の男が医師を撲殺した。
ほかにも治療に不満を募らせた患者の家族らが数十人単位で病院に乗り込んで、医師を殴打したり、病院施設を破壊するなどの事件も報じられている。いずれも手術や診察、治療費への不満が動機だ。
週刊紙「南方週末」によると、都市部の総合病院に患者が殺到し、医者が患者と十分なコミュニケーションがとれないとか、経済的に苦しい人は低価格で技術が低い粗雑な医療機関で診療を受けるが、不公平な待遇に怒って暴力沙汰になるという。
当局発表ではこれらの医療トラブルは年間7万件だが、実際はもっと多いとみられている。
モンスターペイシェントによる医療暴力の頻発に自衛措置を講じようと、北京では医療関係者による自警組織「ガーディアン・エンジェルス」結成の動きが活発化している。医学部の学生や医療関係者、他の患者らボランティアが中心で、当面は1500人を集め、市内の21病院を巡回することにしている。
中国では社会保障制度が未整備で、医療保険も十分ではないことから、市民の間で診察費や手術費用の自己負担の増大に不満が高まっている。このため、政府は2020年までに1兆元の医療保険基金を設立する方針だ。