中国の習近平・国家主席が福建省や浙江省のトップだった際、ずっと寄り添うように習氏に仕えてきた20年来の側近が今年3月下旬、わずか5か月間で浙江省の副省長を辞職するという極めて異例の人事が発表された。
習氏の側近中の側近だけに、今年2月に結成されたばかりの中央インターネット安全・情報化指導小組(グループ)や、1月に結成された中央国家安全委員会などの要職に就いたのではとの観測も浮上している。
習指導部では習氏と個人的な関係が強い人物が要職に就くケースが多く、「習近平のお友達人事」と揶揄する向きもある。
この側近は蔡奇氏で、年齢は習氏の2歳下の58歳。習氏は1985年6月に福建省廈門市副市長として福建省入りしたが、蔡氏は1983年に福建省庁入りし、その後、習氏が2002年に浙江省長代理として同省に転じると、蔡氏も同省に移り、同省の衢州市長に任命された。
その後、習氏が2007年に上海市トップに転じたあとも、蔡氏は浙江省に留まっていたが、習氏が党最高指導部入り後も、同省で順調に出世し、2013年11月から副省長に就任。ところが、そのわずか4か月後の今年3月に副省長を辞任している。
蔡氏は習氏にきわめて近い関係であることから、習氏に鶴の一声で、中央に転じたとの観測がさまざまなメディアによって報じられている。
たとえば、インターネットの中国情報専門サイト「多維新聞網」は、中央インターネット安全・情報化指導小組(グループ)の事務局である同小組弁公室の実質的ナンバー1の副主任に就任したと報じた。また、香港各紙は中国内の治安維持や海外諜報網に責任を持つ中央国家安全委員会の弁公室副主任のポストを挙げている。
これについて、北京の外交筋は次のように指摘する。
「いずれにしても蔡氏が要職に就いているのは間違いないが、そのポストを公表できないほどの機密性の高い重要な部署だろう。習近平指導部では党中央弁公庁主任の栗戦書氏に代表されるように、かつての同僚とか友人、側近といった人物が重要ポストに登用されるケースが多く、蔡氏のご多分に漏れず、典型的なお友達人事のひとつではないか」