以前から、神戸牛や松坂牛などの和牛肉は海外でも人気が高い一方、豚肉は国内の消費のみというイメージが強かった。だが、独力で海外へ進出し、成果を収めつつある日本の豚肉がある。
「厳しい努力を重ねて外国の方に高く買ってもらうことで、日本の農家の誇りを取り戻せるんです」
こう話すのは宮城県登米市にある「伊豆沼農産」の伊藤秀雄社長だ。伊豆沼に本社、加工場、農家直売所、レストランをパッケージで展開している。その特産品として2004年から香港に輸出しているのが「伊達の純粋赤豚」だ。
「宮城県の畜産試験場が開発した『しもふりレッド』を純粋交配して生産した柔らかい肉で多汁性に富み臭みがない。当社の赤豚は現地の平均的な豚肉の6倍、香港で有名な黒豚の1.5倍の値段で売れます」(伊藤社長)
売り上げは年間1000万円程度。10年間、高値の純粋赤豚が売れ続ける秘訣は出荷前の「検食」にある。
「『検食』とはスタッフがすべての純粋赤豚を食べて柔らかさや風味、食感などをチェックする作業。実際に食べて最もおいしい肉を輸出に回します。他の日本の業者はどこもやっていないはずです」(伊藤社長)
検食の結果、1頭のうち3割の肉が弾かれるが、必要な投資と信じる。
※SAPIO2014年5月号