震度5弱──その大きな揺れが東京で観測されたのは、3年前の東日本大震災以来のことだった。
ゴールデンウイーク真っただ中の5日午前5時18分頃、東京・伊豆大島沖を震源とするM6.0の地震が発生。しかし、不思議なことに、最大震度5弱を記録したのは震源から近い静岡や神奈川ではなく、80kmも離れた東京都千代田区だ。
地震学を専門にする武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏は「異常震域現象が起きていた」と解説する。
「地震は通常、震源から近ければ近いほど揺れが強く、遠くなれば弱くなるもの。異常震域現象とは、これとは反対に震源地よりも遠く離れた場所で異常に震度が高くなってしまう現象です」
実はこれは決して珍しいことではないというのだ。2007年7月に京都府沖を震源とした地震では、京都では揺れを感じなかったにもかかわらず、東日本では強い揺れとなり、震源から約300km離れた北海道で震度4を観測。
また、2003年11月に紀伊半島沖を震源とした地震では、震源に近い近畿地方よりもやはり東日本の太平洋側の方が揺れは大きく、震源から400kmも離れた福島県で震度4を観測した。
「今回の地震の震源は地下162kmと非常に深く、陸側のプレートの下に潜り込む太平洋プレートの内部で発生しました。太平洋プレートは非常に硬く地震の波が伝わりやすい。一方、震源の真上にはマントルという軟らかい層があるため、震動はその上の陸側のプレートには伝わりにくい。そのため、震源上より東側にある太平洋プレートに沿って大きな揺れとなってしまいました。京都や紀伊半島を震源とするふたつの地震も、同じように地中深く太平洋プレート内部で起きたものなのです」(前出・島村氏)
揺れの大きさを左右するのは、それだけではない。
「今回、なぜ千代田区がいちばん揺れたかといえば、それは地盤の弱さもあります。地盤が弱い地域とそうでない地域ではそれだけで震度1~2は変わってくるんです」(前出・島村氏)
今回の地震がそうであったように、異常震域現象が起きた場合、緊急地震速報を流すことや予知は非常に難しい。あらかじめいつ地震が起きても大丈夫なように備えておくこと、そして、揺れを感じたらすぐに適切な対処をすること。それだけが自分や家族を守る唯一の方法だ。
※女性セブン2014年5月22日号