中国共産党トップの習近平国家主席の肝いりで、中国各地で党政府幹部の腐敗撲滅キャンペーンが大々的に展開されているが、これらの不正を取り締まる党中央規律検査委員会のトップ、王岐山・同委書記(党政治局常務委員)が昨年8月下旬、出張先の江西省南昌市で、2人組の暴漢に襲われ、危うく殺害されるところだった。王氏以外にも、同委幹部4人が命を狙われており、習氏は同委関係者の警備強化を指示したという。香港誌「動向」が報じた。
王氏を狙った2人は地元の元警官で、入念な計画を立てての犯行だったとみられる。というのも、王氏のような党最高幹部の動向は極秘扱いで、視察先の地方政府には2、3日前に連絡されるからだ。その情報を知り得る人物は地方の最高幹部である可能性が高く、王氏の行動予定を仔細にチェックしていたとみられる。
犯行は王氏が南昌市に到着した日の夜、宿舎である省政府直轄の幹部専用の迎賓館で起きた。王氏ら一行が視察を終えて食事をとった後、それぞれが部屋に入った。ところが、すぐに停電し、館内が真っ暗になったところで、2人が王氏の部屋に侵入した。しかし、隣室のSP(保安要員)が、王氏に声をかけたところ、異変に気づき、2人を取り押さえようとした。2人は隙を見て拳銃で自らの頭を撃ち抜いて自殺したという。
警察が2人の指紋などを調べ、元警官であることが判明した。いまのところ、2人が誰の指示で、王氏を襲ったかは不明だが、王氏は今年2月の春節(旧正月)で、猛毒性の薬品の粉が入った年賀の封書が送りつけられるなど、王氏を怨んでいる者は多いとみられる。
今年4月には同委内に、2012年11月の習近平指導部発足後、同委幹部を狙った暗殺未遂事件4件の捜査本部が立ち上がっており、習氏も王氏ら同委幹部の身辺警護を強化するよう指示した。北京の党幹部は「これは氷山の一角で、同委の地方の末端幹部の被害まで合わせると、かなりの膨大な数字になる」と指摘する。
中国最高人民検察院(最高検)の曹建明検察長は今年3月の全国人民代表大会(全人代)で、中国では昨年1年間で、汚職を含む腐敗官僚5万1306人を立件したと発表しており、汚職の深刻さを示している。