65歳までの雇用が義務化され、“生涯現役”がいよいよ現実のものとなる。シニア世代の中には、少々毛色の変わった仕事に挑戦している人たちもいる。
旅行代理店で営業部長を務めていた榊原啓次さん(67)は、2年前、折込チラシを見て大手外食チェーン「ワタミ」の宅食事業「ワタミタクショク」の仕事を始めた。主に高齢者の自宅に弁当を宅配するこの仕事は業務委託で、軒数による出来高制。1日約50軒を回り、週5日で月収は8万~10万円になる。報酬のほとんどは孫との旅行代に充てているという。
「雨の日も雪の日もお届けします」というが、思わぬ“成果”も。宅配のたびに電動自転車を10キロ漕ぎ続けた結果、1年で体重はマイナス5kg、ウエストもマイナス5cmになり、メタボが解消された。
一方、身長175cm、胸囲103cmと格闘家のようなムキムキボディを持つ久保田武志さん(72)の仕事は「シニアモデル」(シニア専門モデル事務所「シニアリストモデルエージェンシー」所属)。
大手精密機器メーカーの営業部に40年在籍していた久保田さんは、定年後、家でダラダラ過ごすことが耐えられず、「刺激を求めていた」と話す。そんな時、新聞広告でモデル募集広告を発見。すぐに応募し、2004年から始めたモデルのキャリアは10年になる。
モデルだけでなく、数年前から俳優業にも進出。これまで映画『海猿』やテレビドラマ『赤い霊柩車シリーズ』など有名作品にも出演してきた。「35歳から“健康な年寄りになるため”ずっと筋トレを続けてきましたが、この仕事に出会って、80歳、90歳になっても現役で活躍したいという思いが強くなった」と久保田さん。
報酬は広告やドラマなど仕事内容で違う。高いと1本10万円以上だが、安いと数千円ということも。それでも、この10年間で国産のセダンが2台買えるぐらいは稼いだという。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号