3月28日、国会で「在外公館設置法改正案」が成立した。これは「円安で生活が苦しくなる」という理由で、海外に赴任する大使以下の外務省職員に給料とは別に支給される「在勤基本手当」を大幅に引き上げる内容だ。
例えば駐中国大使の場合、月給213万円の他に月額79万円だった在勤基本手当が、この4月から93万円へと一気に14万円もアップした。
実は、外務省は手当増額の基礎資料となった各国の生活費比較で、なんとも珍妙なデータを使っている。同省の委託で作成された『民間調査機関による一般的生計費調査の結果』(平成22年8月)と題する資料によると、世界145都市を比較した結果、日本は世界で最も生活費が安い地域のひとつであり、欧州は日本の1.28倍、北米は1.1倍、アフリカは1.09倍など軒並み日本より高いとされている(都市別比較は非公表)。
こんな調査を一体、世界の誰が信じるだろうか。英国の経済誌『エコノミスト』の調査部門EIUが毎年公表している海外駐在員の「生活費が高い都市ランキング」では、昨年は東京がトップ、今年は円安で6位に下がったものの、東京の生活費はニューヨークより18%高く、北京より34%も高い。
外務省が在勤基本手当を大幅に引き上げるために、いかにお手盛りの調査をしたかがわかる。
外交官の最大の任務は情報収集と分析だ。国益のためになる仕事をしてくれるなら、高い手当を支給する価値はある。しかし、東京と赴任先の生活費のどちらが高いかもわからない外務官僚たちに、それを期待するのはどだい無理というものだろう。
※週刊ポスト2014年5月23日号