欧米の数々の研究では、血圧や血糖値について薬で無理やり下げすぎると、かえって健康を害したり死亡率が増加したりするといった驚愕のデータが発表されている。昨年にはコレステロールの新しいガイドラインも策定されていた。
これも驚くべき内容で、「動脈硬化を促すとされ、“悪玉”と呼ばれているLDLコレステロールを下げても、心筋梗塞などの心血管疾患が治療・改善される根拠はない」として、基準値そのものが撤廃された。
現在、日本では60~119mg/dlがLDLコレステロールの正常値だ。しかし、アメリカのガイドラインでは、コレステロールを一定の数値に誘導する治療法そのものに疑問が投げかけられているのだ。
「コレステロールは細胞膜や神経、ホルモンなどの材料で人体には必要不可欠なものです。コレステロール値は高値よりも、実は低い値のほうが要注意なのです」
こう話すのは東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一・大櫛医学情報研究所長だ。
大櫛氏らが2009年に発表した、日本人2万6121人を平均8.1年間追跡した調査によれば、男性において、LDLコレステロールが100mg/dl未満の集団で肺炎などによる死亡が増加し、総死亡率が最も悪化したという。
「男性ではLDLコレステロールが160mg/dl以上の集団で総死亡率の上昇は認められましたが、これは高コレステロール血症という遺伝病が原因です。しかも、上昇率は100mg/dl未満のグループに比べると小さなものでした。
また、女性では、LDLコレステロールが高い集団であっても総死亡率の上昇は見られませんでした。それよりも、危険なのはコレステロールを下げすぎること。
先の調査結果の通り、細胞の免疫力が落ちて感染症などにかかりやすくなってしまう。日本ほどデタラメな非常識が“常識”としてまかり通って、患者の健康を損ねている国は他にありません」(大櫛氏)
※週刊ポスト2014年5月23日号