今年に入り、アイドルグループ・嵐と役所広司が出演するCMやポスター、電車の吊り広告を繰り返し見かけた人は少なくないだろう。キリンは今、昨年の2倍もの広告宣伝費を投下して『一番搾り』に注力している。昨年末、大きくリニューアルされた『一番搾り』の何が“一番”なのかについて、ジャーナリストの永井隆氏が報告する。
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今年3月で発売25年目を迎えたキリンの「一番搾り」は昨年末に大きくリニューアルされた。何が変わったのか。キリンビール滋賀工場醸造エネルギー担当部長の黒杭隆政氏(45)が解説する。
「リニューアルは、麦芽100%にした2009年に続く2度目です。仕込みと発酵過程を改良して渋みや雑味を低減させ、うまみを引き出しました。さらに、華やかな香りのホップの比率を高めています」
味のリニューアルだけではない。消費者への訴求方法も大転換した。一番搾りのブランドマネージャーであるキリンビールマーケティング部の門田邦彦氏(43)が語る。
「一番搾りとは、麦汁の濾過(ろか)工程で一番初めに流れる麦汁だけを使った商品です。それによって“すっきりしてるのに、うまみも充分”という特徴が出てきます。
しかし調査したところ、一番搾りの意味が消費者の皆さんに伝わっていなかったのです。愕然としました。ビール好きのある程度の年齢の方は知っているが、若い世代を中心に『何が“一番”なの?』という人が多かった。当然知っているはずだという我々メーカーのおごり、あるいは怠慢があったのかもしれません」
そこで始めたのが、イオンなどショッピングモールや大型スーパー、量販店の店頭で展開する「ブランドセミナー」だ。店を訪れた客を呼び込み、一番搾り製法のこだわりを伝えていく。