日本人にとって、近くて手軽な観光地して人気があるサイパンに中国人妊婦が大挙して押しかけ、出産するという「バース(出産)ツーリズム」が問題になっているという。サイパンに近いグアムでも同じような現象が見られるなど、グアム、サイパンが属する北マリアナ諸島連邦内でも大きな混乱が広がっている。米全国紙「USA TODAY」が報じた。
サイパンでは2009年、中国人にノービザで最長45日間滞在できるというビザ免除措置を採用。その後、中国人観光客が急増し、それまでほとんどゼロだったものが、サイパンでは現在、毎週、北京や上海、広州、西安など8都市からチャーター便が到着。2012年には10万人の大台を超えたという。
ところが、そのなかの中国人妊婦が滞在許可期間の45日を過ぎても違法に滞在し、子どもを出産してから帰国するというケースが激増した。「不法滞在も180日間以内ならば、お咎めはなし」という取り決めを逆手にとった形だ。
同連邦の統計によると、北マリアナ諸島連邦の人口は5万3883人と10年前に比べ20%減少したが、2011年の出生数は10331人と1年前と比べ変化はない。だが、そのうちアジア・太平洋系の母親からの出生数は1022人で、「サイパンで生まれる赤ちゃんの7割が中国人」という。
グアムはノービザの制度は採用していないが、今年の春節(旧正月)には中国内の各都市からのチャーター機で1500人の中国人観光客が押し寄せた。さらに、グアム観光協会は今財政年度(2013年10月~2014年9月)の1年間で、中国からの来島者数を1万4000人と見込んでいるが、すでに1月29日時点で1万1201人に達しており、当初見込み数を大幅に超える3万人近い中国人客がグアムを訪れるとみられる。
問題はサイパン同様、中国人妊婦による「出産旅行」が急増していることだ。しかも、中国の観光代理店を島内の観光業者が結託して、妊婦を人目がつかないペンションなどに囲い込んで、出産する病院もグルになっているケースもあるという。
妊婦の滞在費は約1万ドル(100万円)で、航空機の運賃は含まない。それに、出産費用が1万1000ドル(約110万円)と高額の費用がかかるものの、「子どもに米国籍が手に入れば、元は取れる」とばかり来島する中国人妊婦は引きも切らないという。
グアム選出のマデリン・ボダリオ米下院議員は「妊婦の米国入国は決して違法ではないが、入国の目的が出産ではないかと入国審査官が疑いを持った場合、入国拒否になる可能性もある。米政府はやみくもに米国籍者を増やすことに懸念を抱いている。無事に出産したとしても親子で帰国できるといった保証はなく、安易な考えは禁物」だと中国や同連邦内の違法業者や中国人妊婦らに警告を発しているが、中国人の「バースツーリズム」が止む気配はみえない。