国内

1999年の画期的な抗鬱剤の日本上陸が鬱病大発生させた原因か

 ほんの15年ほど前まで、うつ病は日本人にとってそれほど身近な病気ではなかった。1990年代後半まで、うつ病患者数は40万人前後で、ほとんど増減しなかった。フジ虎ノ門健康増進センター長で精神科医の斉尾武郎氏がいう。

「1990年代後半までは、精神科で治療の対象となる患者は、強い妄想を抱いたり、自殺の恐れがあったり、通常の生活を営むことができない重篤な症状を持つ人だけでした。だから、研修医を受け入れるような大病院でもうつ病患者は数えるほどしか入院していなかった」

 しかし、2000年代に入ると患者数は右肩上がりで増え、1996年には40万人超だったものが2008年には100万人を突破。それに伴い、日本の抗うつ薬の市場規模も1996年の8倍と爆発的に伸びている。

 最近では、うつ病は深刻な社会問題にまでなっている。精神疾患を抱える人が学校に通えなかったり、会社を長期休養したりするケースが頻発しているからだ。なぜ、1990年代までは病名さえ一般的でなかったうつ病の患者が、ここまで増えてしまったのか。

 一般的に、日本でうつ病が増えた原因は、「バブル崩壊後の日本経済の停滞」や「非正規労働者の増大」「グローバル競争の苛烈化」など、経済状況や労働環境の悪化の文脈で説明されてきた。しかし、それだけでは2000年頃から爆発的に増加した理由にはならない。

 パナソニック健康保険組合メンタルヘルス科東京担当部長の冨高辰一郎氏の著書『なぜうつ病の人が増えたのか』(幻冬舎ルネッサンス新書)によると、イギリスやアメリカでは、日本より約10年先行してうつ病患者が増えている。その増加曲線を経済の好不調に照らし合わせると、不況だからといってうつ病患者が増えるわけではなく、それらの因果関係は薄いという。

 それではなにが原因なのか──。実は1999年、日本に新しい“画期的”な抗うつ薬が上陸したのだが、それがうつ病を大発生させたと見られているのである。

「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」。1999年に初めて日本で認可されたこの薬は、セロトニンの血中濃度を高めることによって、うつ症状を軽減させようというものだ。現在、フルボキサミン(商品名デプロメール、ルボックス)、パロキセチン(同パキシル)、セルトラリン(同ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(同レクサプロ)の4種がSSRI系の抗うつ薬として日本で認可されている。

「これらSSRIの登場によって、日本のうつ病を巡る環境は一変した」と、前出の斉尾氏が語る。

関連キーワード

トピックス

中学時代の江口容疑者と、現場となった自宅
「ガチ恋だったのかな」女子高生死体遺棄の江口真先容疑者(21) 知人が語る“陰キャだった少年時代”「昔からゲーマー。国民的アニメのカードゲームにハマってた」【愛知・一宮市】
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認め全店閉店へ(左・時事通信フォト、右・HPより 写真は当該の店舗ではありません)
【こんなに汚かったのか…】全店閉店中の「すき家」現役クルーが証言「ネズミ混入で売上4割減」 各店舗に“緊急告知”した内容
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
江口容疑者と自宅
《16歳女子高生の遺体を隠し…》「6人家族だけど、共働きのご両親が不在がちで…」江口真先容疑者(21)が実家クローゼットに死体を遺棄できた理由
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える”心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン