世界保健機関(WHO)が抗生物質の効かない淋病の蔓延に警告を出している。淋病とは、淋菌の感染によって起きる性感染症の一つだ。性行為やオーラルセックスで感染し、淋菌は性器や咽の奥で繁殖し、淋菌性尿道炎を発症する。
男性の場合、尿道内に炎症が起きて、尿道から膿が流れ出て、排尿時には鋭い痛みを感じる。女性の場合は、自覚症状がないことが多いが、放置すると菌が骨盤内の膜や卵巣、卵管に進み、内臓の炎症や不妊症、子宮外妊娠に発展することもある。出産時に母子感染も起き、子供の目に淋菌がついて失明する危険もある。
淋病の治療には、セフィキシムという抗生物質が世界中で使われているが、耐性菌の出現で使えなくなっている国として、オーストラリア、フランス、日本など10か国が挙げられている。
厚労省の性感染症報告数の調査によれば、淋病は2002年の2万1921件をピークに減少してきたが、2010年ごろに底を打ち、ここ数年は1万件前後で横ばいが続いている。
淋病研究の権威で、元・産業医科大副学長の松本哲朗氏(現・北九州市役所保健福祉局医務監)はこう語る。
「根絶できなかったのはさまざまな要因が考えられますが、不十分な治療や海外からの持ち込みで、耐性菌が増えたこともその一つといえます」
現実にいま、淋病感染の温床になっているのは、性風俗産業よりも、素人女性だといわれている。京都で耐性菌を発見した保科医院の保科眞二医師は、実態をこう語る。
「風俗の女性は、店が定期検診を受けさせることが多いですが、素人の女性は検診を受ける機会が少ない。女性は自覚症状が出ないことが多いので、なかなか検診にまで至らないのです。
妊娠中絶を希望されてくる女性を検査すると、感染していることがあります。性的に活発な女の子たちは、概して無防備なので陽性と出ることが多い。実感としては風俗の女性より素人の方が危ないように思います。高校生もいますよ」
性に開放的な若年層の女性が感染源となるケースは多いのである。
※週刊ポスト2014年5月30日号