つい数年前まで、視聴率争いのトップを繰り広げていた日本テレビとフジテレビ。だが、フジは民放3位どころか、4位に落ちる日も珍しくなく、凋落が止まらない。一方、4月の改編を終えても、一向に調子の上がらないフジを尻目に、日テレは好調を維持している。
ゴールデンウィークの週平均世帯視聴率(4月28日~5月4日)を見てみると、フジテレビは全日こそ民放3位だったが、ゴールデン帯は9.2%で民放4位に甘んじた。一方の日本テレビは、全日とゴールデン帯で首位だ。いったいなぜ、これほどまでに差がついてしまったのだろうか。テレビ局関係者が話す。
「日テレは、フジと視聴率トップ争いを演じるようになった1990年代から今まで、常にテレビ界のそれまでの常識を打ち破ってきています。
たとえば、今では当たり前になっている“フライングスタート”。昔は、19時や20時というきっかりの時間に番組を始めていたが、その慣例を破り、19時54分~などというフライングを導入しました。これが視聴率首位の座を不動のモノとする、一つのキッカケとなり、以降、フジなど各局がマネし始めましたね。
また、かつて1時間が当たり前だった夕方のニュース枠を拡大させたのも、日テレです。1996年10月から『ニュースプラス1』の開始を30分繰り下げた。今では、どの局も2時間が当たり前になっていますよね。今年1月からは、『news every.』をさらに1時間も拡大して、15時50分から放送しています。
このように他局に先駆けて先手を打つ姿勢が続いているからこそ、20年にわたり、視聴率トップ争いを繰り広げていけるのです」
その日テレが、4月改編期に1本もゴールデン帯の番組を変えなかった。これまで他局に先んじて動いてきた日テレからすれば、一見、意外にも思える。だが、この無改編こそ、日テレらしい時代を鋭く読んだ編成だと前出のテレビ局い関係者は指摘する。
「たしかに、ゴールデン帯は2ケタを獲る番組がほとんどだったので、終わらせる必要がなかったという側面はあります。でも、それはあくまで建前。テレビを見ない人たちが増えている時代なので、あえて新番組に変えても浸透しづらいと判断したのでしょう。
逆に、1990年代や2000年代前半は、まだまだ数字の期待できる『投稿!特ホウ王国』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』などを積極的に新番組に切り替えていき、社内を活性化させ、視聴率3冠王を獲り続けた。常に時代の流れを読んで、勝負所をおさえている。今は改編する勇気よりも、改編しない勇気が必要な時代とわかっているのでしょう。昔も今も、日テレは勝負の勘所が冴えていますね」(同前)
日テレのゴールデン帯の無改編という奇策は、いまのところ功を奏しているようだ。