韓国の旅客船沈没事故報道で、大統領府から圧力がかかって政府寄りの報道をしたとの疑惑が浮上し、厳しい批判を受けているのが国営放送のKBSである。
KBSの前報道局長の金時坤氏は、在任中に「青瓦台(大統領官邸)高官が何度も電話をかけてきて要求を出し、社長からも特定のニュースを抜いたり縮小するよう、具体的な指示を数えきれないほど受けた」と、圧力があったことを暴露した。
KBSは以前から政府寄りであるとして批判されてきた。韓国の地上波の全国キー局は3つあり、主要2局(残り一つは教育放送のEBS)のうち、KBSは国営放送、MBCは準国営。一般的に、KBSは政権寄り、他2つは反政権という位置づけとされている。全国規模で展開する局にはもうひとつSBSがあるが、法律上はあくまでソウルを拠点とした地方局である。韓国に詳しいジャーナリストの宇田川敬介氏が語る。
「KBSがこんな調子であるのに対して、SBSなどは反政府的で『朴政権が続く限りは韓国は三流国』など批判ばかりで、実は中立なテレビ局がない。だから、韓国のインテリ層は、日本のNHKBSで英語のニュース放送を見て客観的情報を得ている。
英語が苦手な人は、この放送に翻訳字幕が入った動画を投稿サイトで見る。沈没事故のときはみなそうしていました」
自国で起きた事故なのに、自国のニュースが信じられないというのは悲しい。
※週刊ポスト2014年6月6日号