韓国メディア界の一つの特徴は、インターネットメディアの発展だ。独立系のニュースサイトが、影響力の面ではすでに紙媒体を上回っている。たとえば、「市民はみな記者だ」をモットーにした「オーマイニュース」は、市民ジャーナリズムを韓国に定着させた。
ところが、雨後の筍のように乱立したニュースサイトのなかには、ネット掲示板の内容をそのまま転載したような取材の形跡がない記事が目立つ。
「最近では、日本の全国紙に掲載された韓国や歴史認識問題に関する発言などを翻訳したものばかり。まとめサイトNAVERでニュース記事の数を検索してみると、朝日新聞の4万3000件を筆頭に、読売、産経などが3万件前後も引用され、ネットニュースとして配信されています」(韓国のネット事情に詳しいライターの河鐘基氏)
たとえば、ニュースサイト「亜洲経済」5月16日付は「日本・集団的自衛権──戦争に必要最小限はない(朝日新聞社説)」とする記事を配信。中身は、〈集団的自衛権は、行使した瞬間、相手国から見れば、日本は「敵国」になると指摘し、憲法解釈の変更は、内閣が憲法を支配する歪んだ支配構造を可能にするという問題点があると主張した〉など、朝日の社説をまるまる紹介するだけで、論評や解説すら付いていない。
ただし、これが韓国に厳しい論調の目立つ産経新聞だと事情が変わる。ニュースサイト「News is」5月12日付は、「“朴大統領の謝罪は韓国人の低い国民性のため”……日・産経」と題する記事を配信。
〈日本の保守メディア産経新聞は「大統領への批判があまりにも感情的だ」と批判し、その原因を韓国人の国民性に向けた〉
だが、こちらの記事には続きがある。これについての韓国ネチズンたちの反応が書かれているのだ。
〈「大統領制への理解が不足しているコメント」、「福島原発事故の収拾では、理性的な対応を見せていない」など、とんでもないという反応を見せた〉
要するに、韓国寄りの朝日の記事は「我が意を得たり」とそのまま転載し、韓国に厳しい産経の記事には「ふざけるな」と突っ込みを入れるだけ。これがネットニュース先進国の実態なのだ。
※週刊ポスト2014年6月6日号