今年、よく耳にする“ボタニカル”という言葉。各ファッションブランドは木の葉や実、草花など、植物をモチーフにしたボタニカル柄プリントの様々なアイテムをそろえ、表参道ヒルズは開業8周年のテーマに「ボタニカル・シンフォニー」を掲げている。本来は“植物の”という意味だが、最近は“植物を積極的に取り入れる”というイメージで、トレンドのキーワードとなっている。
流行に詳しい、トレンドウォッチャーのくどうみやこさんも“ボタニカル”には注目しているという。
「エルメスなどのファッションブランドが、2014年春夏コレクションで発表したのをきっかけに、ボタニカルプリントが流行。洋服だけでなく、インテリア雑貨にも元気で華やかな植物柄が溢れています。また、ノンシリコンシャンプーに次ぐ大ヒットになりそうなのが、植物エキスを配合したオイルシャンプーです。
美容商品や飲料なども植物の力をクローズアップしているので、五感を通じての“ボタニカル”が今年のテーマになりそうです」
主に女性向けのファッションで流行しているから、急に身の回りに植物の力を取り入れたボタニカルなものが増えたわけではない。たとえば、夏が近づくと話題になるグリーンカーテンも植物の力を利用したもの。
ベランダなどで緑の葉が茂る植物を栽培し、直射日光を避けて室温の上昇を防ぐ効果があるグリーンカーテンは、2011年以降、夏の節電対策として話題になり広く知られるようになった。実際に育てた人に訊ねると「植物の栽培が楽しかった」(51.6%)、「植物により癒しを得た」(47.6%)と節電の効果より、精神的な満足感が多く挙げられていた(環境省調べ)。
節電のために始めたグリーンカーテンで、植物の力に魅せられた人も少なくないようだ。インテリア感覚で野菜の栽培が楽しめる水耕栽培器がヒットするなど、ベランダや室内で気軽な家庭菜園を始める“ボタニカル”な人が増えている。2014年度の野菜苗・果樹苗市場規模は前年度比102.0%の153億円、2015年度は同104.6%の160億円と拡大が予測されている(株式会社矢野経済研究所調べ)。
直接、植物に触れるだけでなく、前出のくどうさんが言うように美容商品や食品でも植物の力が注入されたものが増えている。
たとえば、『オレオドール ボタニカル オイルシャンプー』(モイスチュア)はエゴマやグレープシード、オリーブなど5つのオイルが髪を補修する効果をもたらす(500ml 972円/コーセーコスメポート)。発売から累計195億本を突破した『爽健美茶』(525ml 152 円/日本コカ・コーラ)は、全部で12種類の植物素材を独自でブレンドしたカフェインゼロのボタニカル飲料だ。
「今年、全国発売20周年を迎える『爽健美茶』は、いち早く植物の力に注目したロングセラー飲料。発売当時はバブル崩壊後、癒しを求める傾向にあったので、ハトムギや玄米など植物のもつ健やかな味わいを飲料にも取り入れようと開発しました。現在は、新たに黒ごまやヨモギを加え、よりスッキリした味わいです」(日本コカ・コーラ 朴英俊さん)
健やかな植物のパワーを日々の暮らしに取り入れる”ボタニカル女子”が、これから増えてゆくのは間違いなさそうだ。