今年1月、ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市、コンシューマー・エレクトロニクス・ショーは、韓国メーカーや中国メーカーの勢いと、それとは対照的な日本メーカーの元気のなさを感じさせた。
その視察に訪れたパナソニックの津賀一宏社長はこう言い切ったという。
「もう日本の家電はダメだな。一目瞭然だ。韓国、中国と価格競争してもしようがない。うちは儲ける道を別に探す」
津賀氏が言う「儲ける道」とは自動車関連事業や、住宅関連事業のこと。たとえば、ブレーキ、照明、洗面、風呂である。そうした分野はメーカーが価格決定権を持ち、単価が高く、従って利益を出しやすい。
「“お風呂やブレーキを売るためにパナソニックに入ったのではない”といった反発の声が社内にあることは確かですが、津賀さんはまったく気に掛けていない」(パナソニックと取引のある財界人)
社内に反発があるという話題になると、津賀氏は決まって次のように言うという。
「そんな奴がいたからパナソニックはダメになった。それがまだわからないのか」
同社の2014年3月期の決算では、売上高はソニーとほぼ同規模の7兆7365億円だったが、当期利益は1204億円の黒字。2012年3月期、2013年3月期と2期連続で7500億円超の巨額赤字を計上したことからすると、急速な業績回復である。
『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏が話す。
「プラズマテレビから撤退してテレビ部門を大幅に縮小するなど家電事業に見切りをつけ、自動車関連事業や住宅関連事業に重点をシフトした戦略が功を奏し始めています」
その戦略を推し進めるのが、2012年6月に社長に就任した津賀氏にほかならない。同氏の戦略は“ツガノミクス”として投資家からの覚えもめでたい。
※週刊ポスト2014年6月6日号