国内

就労可能生活保護受給者に職業訓練施し移民不要と三橋貴明氏

 内閣府の経済諮問会議ワーキング・グループは「少子高齢化で生産年齢人口が減れば経済成長ができない」などと年間20万人の移民受け入れを提唱している。これに対して経済評論家の三橋貴明氏は、それはまやかしにすぎないと指摘する。

 * * *
 経済諮問会議のワーキング・グループは、「高齢化による日本の衰退」「生産年齢人口減少による経済停滞」を持ち出し「グローバリゼーションに逆らえば日本は衰退する」というロジックで外国人移民を増やそうという。

 この理屈は、「グローバルな競争に打ち勝つためには賃金の高騰を抑えて国際競争力を高めなくてはならない」という安倍晋三首相の思惑とも一致し、安価な外国人労働者の雇用で利益を得ようとする経済界からも歓迎された。

 しかし、外国人頼みのグローバル化を進めれば、全体のGDP(国内総生産)は増えるかもしれないが、賃下げによって1人当たりGDPは下がる。日本への移民は中国系が多数を占めるだろう。

 毎年20万人に限ったところで、現在の日本人の1人当たりGDP約3万6000ドルと中国人の1人当たりGDP約7300ドルはあまりに格差があるため下落圧力は間違いなくかかる。これで日本国民が幸せになれるはずがない。ほくそ笑むのはグローバル企業とごく一握りの投資家だけだ。

 労働力が不足しているのなら、毎年20万人の外国人を迎え入れる前に、日本人の生産性を上げるほうが国益に適うはずである。生産年齢人口が毎年減少するといっても、その数は総人口の1%未満に過ぎない。

 また、高齢者が増加したとして、高齢者世帯は消費の担い手でもあるから悲観材料ばかりではない。

 重要なのは生産性を高めることである。現在、生活保護受給者は216万人いるが、そのなかで就労可能な受給者は約30万人に上るといわれている。そうした人たちに1人当たり100万円かけて職業訓練を施す手もある。わずか3000億円で済む話だ。土木・建設はもちろん、農業や医療、介護など人手が不足している業種で働ける人材を増やせば、生産性は向上するはずだ。

 仮に外国人労働者に仕事を任せた場合、どうなるか。ドイツでは、鉱業などの単純労働でトルコ人移民を多数受け入れた結果、それら一部の産業がトルコ人抜きでは成り立たなくなる事態に陥った。単純労働とは言っても、現場ではそれ相応のスキルが必要なのである。

 日本でも人手不足の土木・建設を外国人に任せれば、やがて日本人だけではインフラ整備が立ち行かなくなることも想定される。20~30年後には日本人が高層ビルを建てられなくなるかもしれない。「日本経済は日本国民が成長させる」という気概が必要だ。

※SAPIO2014年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン