内閣府の経済諮問会議ワーキング・グループは「少子高齢化で生産年齢人口が減れば経済成長ができない」などと年間20万人の移民受け入れを提唱している。これに対して経済評論家の三橋貴明氏は、それはまやかしにすぎないと指摘する。
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経済諮問会議のワーキング・グループは、「高齢化による日本の衰退」「生産年齢人口減少による経済停滞」を持ち出し「グローバリゼーションに逆らえば日本は衰退する」というロジックで外国人移民を増やそうという。
この理屈は、「グローバルな競争に打ち勝つためには賃金の高騰を抑えて国際競争力を高めなくてはならない」という安倍晋三首相の思惑とも一致し、安価な外国人労働者の雇用で利益を得ようとする経済界からも歓迎された。
しかし、外国人頼みのグローバル化を進めれば、全体のGDP(国内総生産)は増えるかもしれないが、賃下げによって1人当たりGDPは下がる。日本への移民は中国系が多数を占めるだろう。
毎年20万人に限ったところで、現在の日本人の1人当たりGDP約3万6000ドルと中国人の1人当たりGDP約7300ドルはあまりに格差があるため下落圧力は間違いなくかかる。これで日本国民が幸せになれるはずがない。ほくそ笑むのはグローバル企業とごく一握りの投資家だけだ。
労働力が不足しているのなら、毎年20万人の外国人を迎え入れる前に、日本人の生産性を上げるほうが国益に適うはずである。生産年齢人口が毎年減少するといっても、その数は総人口の1%未満に過ぎない。
また、高齢者が増加したとして、高齢者世帯は消費の担い手でもあるから悲観材料ばかりではない。
重要なのは生産性を高めることである。現在、生活保護受給者は216万人いるが、そのなかで就労可能な受給者は約30万人に上るといわれている。そうした人たちに1人当たり100万円かけて職業訓練を施す手もある。わずか3000億円で済む話だ。土木・建設はもちろん、農業や医療、介護など人手が不足している業種で働ける人材を増やせば、生産性は向上するはずだ。
仮に外国人労働者に仕事を任せた場合、どうなるか。ドイツでは、鉱業などの単純労働でトルコ人移民を多数受け入れた結果、それら一部の産業がトルコ人抜きでは成り立たなくなる事態に陥った。単純労働とは言っても、現場ではそれ相応のスキルが必要なのである。
日本でも人手不足の土木・建設を外国人に任せれば、やがて日本人だけではインフラ整備が立ち行かなくなることも想定される。20~30年後には日本人が高層ビルを建てられなくなるかもしれない。「日本経済は日本国民が成長させる」という気概が必要だ。
※SAPIO2014年6月号