ビジネス

すき家スト騒動 待遇改善要求より企業ダメージ与える報復か

 ゼンショーホールディングス(HD)が運営する牛丼チェーン最大手「すき家」で、アルバイトたちによる“反乱”が広がっている。先月には、5月29日(肉の日)にストライキを起こそうとアルバイトが画策しているという話が、ツイッターを中心に、インターネット上で広まった。

 結論からいうと、当日、ゼンショー側が「ストライキが起きている店舗はない」と回答しているように、大きな混乱は見られなかった。

 過酷な労働に不満を持つ、一部のアルバイトによる「サボタージュ予告」の色合いが強く、本社も万が一に備えて投入できる社員を用意するなど、“臨戦態勢”を取っていたためだと考えられている。

 今回の一件は何もすき家だけに限ったことではない。外食産業に限らず、コンビニなどの深夜帯営業の店舗や、人件費削減を図る業種にとって、対岸の火事では済まされない。

「過重労働でアルバイトが疲弊しているのはどこも同じ」と指摘するのは、経営コンサルタント会社「チームのちから」代表取締役で、アルバイト活用コンサルタントの植竹剛氏だ。そもそも、なぜ黙って働いていたアルバイトが“蜂起”するようになったのか。

「過重労働で辞める、募集するの繰り返しが現実です。これまでは、バイトの穴埋めを『正社員』である『店長』が必死でやってきたから、明るみには出ませんでした。コンビニでもバイト不足の穴埋めのために深夜も働き続け、36時間勤務になるケースもざらです。

 少子化などで人材確保が困難になり、こうした正社員の穴埋めが限界になりつつあるのが、今回の騒動の背景にあります」

 植竹氏は「若者の労働意識の変化やネット社会も要因にある」と続ける。

「過重労働が問題視され始めた30年前は、まだ泣き寝入りするか、仲間意識も強いので何とかみんなで労働環境を改善しようという職場が多かった。それが今では、“安い給料でこき使いやがって。困らせてやろう”という報復型に変質しつつある。

 1人ではできなくても、ネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及で仲間を募ることができるようになり、連帯感が生まれた。今回のストライキ騒動も、本気で待遇改善を求めるというよりも、企業にダメージを与えてやろうという報復だと考えられます」(植竹氏)

 アルバイトの報復に対し、経営者側が考えておくべき対策はあるのか。植竹氏は、こうアドバイスする。

「企業理念や社是から人事制度やマニュアル、社員やアルバイトの評価基準といったプロセスのどこかに、歪みがあると問題が起きやすい。例えばバイトの評価基準などは、できる限り公明正大にすることです」

※週刊ポスト2014年6月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK・東京アナウンス室の中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《裸に見える服》NHK中川安奈アナ、インスタ再開で見えた「フリーへの布石」突如出現したピンクのハートマーク
NEWSポストセブン
藤竜也が明かす『やすらぎの郷』撮影秘話(写真/テレビ朝日)
藤竜也が明かす倉本聰ドラマ『やすらぎの郷』の舞台裏 「床から胸元まで達するほどの膨大な台本に圧倒されました」
週刊ポスト
2
《2010年NHK紅白で『トイレの神様』熱唱の植村花菜》フルで9分52秒の名曲が7分50秒に縮小された理由「すべて歌えないのなら出場できなくても」
NEWSポストセブン
1986年 紅白歌合戦に急遽代打で出演した際の記者会見(時事通信フォト)
《布川敏和が語った還暦で『シブがき隊』再結成》解隊から36年「決定権はもっくんが握っている」「やっくんは同じ思い」の熱烈ラブコール
NEWSポストセブン
(写真提供/宮内庁)
〈伝統破りの経緯を宮内庁は説明せよ!〉とSNSで批判 秋篠宮一家が「半蔵門」を使用することは“不当行為”なのか 宮内庁は“問題ナシ”と回答
NEWSポストセブン
3人組「シブがき隊」もそのひと組。1988年に解散(解隊)後、俳優、タレントとして活動する布川敏和さん
《中森明菜が六本木のディスコで意外なおねだり》「元シブがき隊」布川敏和が告白「18歳で初めて助手席に乗せたのは小泉今日子ちゃん」、“花の82年組”の意外な距離感
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【人生最後の取材】中山美穂さんが見せた孤独感…子育てのためにパリで引退決意も慰留「当初は会えていた」「離れていった母と子の心」創業事務所社長が明かす数々の恋愛と結婚生活
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平は「終わっていない」と言及》水原一平被告が迎える「一変したバースデー」“病気”で量刑言い渡しが延期中、真美子さんと交流あった妻は「絶対的味方」として付き添い
NEWSポストセブン
俳優の若林豪さん
《若林豪が見た昭和俳優たち》「渡哲也クンとは別荘で言えないことばかりやって…」現場で初めて台本を手に取る大先輩に驚愕した過去
NEWSポストセブン
第1子妊娠を報告した大谷翔平と真美子夫人(時事通信フォト)
《真美子さんの前に『お〜いお茶』が…》大谷翔平が公開したエコー写真の米国事情、夫婦がシーズン中に見せていた“異変”「超速帰宅」「違う飲み物を口にして」
NEWSポストセブン
六代目山口組の餅つきに密着した
《六代目山口組の恒例行事・餅つき》「来いって言ってんだろ!アホんだら!」山口組“八代目”候補が声を荒らげた…「緊迫の一瞬」 PCR検査必須の厳戒態勢
NEWSポストセブン
自宅で亡くなった中山美穂さん
《『もう辞めたい』『私にはできない』中山美穂が泣いた日》14歳から39年見続けた“芸能界の父”が明かした素顔、「棺で眠る美穂はきれいでした」最期の別れ
NEWSポストセブン