政府が年間20万人の外国人労働者の受け入れを検討し始めた。「移民」論争の火付け役となったのは、自民党の外国人材交流推進議員連盟が2008年にまとめた「1000万人移民受け入れ構想」だ。
移民基本法を制定して将来的に1000万人の移民を受け入れるという内容で、提言は当時の福田康夫首相に提出された。同議連は政権復帰後の昨年、「自民党国際人材議員連盟」として再スタートした。議連会長の小池百合子氏に今後の展望と課題を直撃した。
──最初に移民政策についての基本的な認識を問いたい。
小池:まずお断わりしておきますが、国際人材議連は「1000万人構想」を引き継いだ組織ではありません。ゼロベースで、わが国の持続、発展に何が必要かを考えていくのが目的です。ですから議連の名称には「移民」「推進」という言葉は使っていません。
「移民」というと国民には強いアレルギーがある。その言葉が前面に立つと拒否感が議論を妨げ、思考停止に陥る恐れがあります。何も進展しないまま時間ばかりがたつ。
移民=国籍付与ではありません。必要な外国人人材を受け入れる形はいくつもある。人口、特に生産年齢人口の減少は深刻です。今、どんな仕組みで国際人材を受け入れていくかは喫緊の課題。先送りはできません。
──安倍政権は目先の建設労働者不足から外国人労働者の受け入れ拡大を言い始めただけではないのか。
小池:日本は外国から単純労働者は受け入れない方針をとってきました。しかし現実は、震災復興や東京五輪などでニーズは多いのに、労働者不足で入札不調が続く状態です。
従来の方針を改める時が迫っています。たとえば都市開発が進む中東の産油国には、インドやバングラデシュなどからの出稼ぎ労働者が多く入っています。彼らはプロジェクトが終われば稼いだお金を持って自国に帰っていく。住み着くわけではありません。これは移民政策とは違います。
仕事とカネを求める外国人労働者と、労働者不足を補える受け入れ国はウィンウィンの関係です。外国人研修生に多くを頼る農業でも、彼らは懸命に働き、農家の方の評価は高い。「日本人にこそ雇用を」と言いつつ、日本人は農業にはこないのが現状です。
※SAPIO2014年6月号