またぞろ珍妙な健康法が流行している様子だ。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聡氏がレポートする。
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健康や長寿にはことさら熱心だといわれる中国の富裕層。これまでも胎盤を食すなど日本人が聞けば引いてしまうような健康法が伝えられてきたが、ここ数年、彼らの間で流行しているのが母乳健康法である。
若い女性から得た母乳をパックして売買するパターンから、器具を介して直接女性から飲むパターンまで金額によってさまざまなメニューが用意されているという。
発祥は、中国の富裕層が集まる深圳だと伝えられるが、いまでは北京にもそうしたビジネスが広がり、インターネットで検索すれば、全国でそれらしい呼び掛けに行き当たることは難しくない。
貧困層の女性が富裕層に母乳提供するという関係が成立し、貧困層にとっては良い収入源になっていて、自ら売り込みをする女性もいるという。
中国国内には、こうした流行に対し「規制すべき」との声の高まりがあるが、そもそも想定していない〝グレーゾーン〟の行為のため専門家の議論も盛り上がってはいない。
ネットなどの情報によれば、売買はたいてい高級ホテルの一室で行われるという。その回に参加するためには最初に入会の手続きが必要で一般会員の入会費は1200元(約20400円)。ゴールド会員になると1680元を支払うという。
さらに母乳が供給される取引に参加する場合には、毎回別途600元から2000元の費用が必要となる。金額からすれば、決して富裕層だけにしか手の届かない世界でもなさそうだ。
それにしても中国人の母乳に対する熱意は凄まじく、ネットの世界には、母乳で料理したアワビである「人乳鮑魚」というものまで見つかる。
需給が成立し、誰かに迷惑をかけているわけではないとはいえ、後味のすっきりしない流行である。