5月30日、神奈川県厚木市にあるアパートの一室で、斎藤理玖(りく)くんの白骨遺体が発見された。遺体は身長1mほどで性別がわからないほど白骨化が進行。解剖の結果などから、理玖くんは5才だった2006年10月から2007年1月の間に衰弱死したとみられている。
保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕されたのは、父親でトラック運転手の斎藤幸裕容疑者(36才)。2001年5月、斎藤容疑者は妻(32才)とともにこのアパートに転居し、直後に理玖くんが生まれた。
しかし、2005年春ごろには斎藤容疑者によるDVを理由に母親が家を出た。理玖くんと2人暮らしになった斎藤容疑者は、直後に飲食店勤務の女性と交際を始め、ますます育児を放棄するようになる。
最初は週5回ほどアパートに帰って1日2食分のコンビニ弁当などを与えていたが、亡くなる2か月ほど前から週1~2度しか帰宅しなくなった。外出する際は理玖くんが外に出られないよう玄関を施錠した。
斎藤容疑者の供述によると、理玖くんは「パパ」「ママ」「ごはん」程度しか話せなかったという。
母親の家出後、料金滞納で電気、ガス、水道が止められた。真っ暗な部屋で理玖くんはお腹をすかして、父親の帰りをひたすら待った。数日間、家を空けていた斎藤容疑者が帰宅しておにぎりやパンを差し出すと、理玖くんはガツガツとむさぼるように頬張ったという。斎藤容疑者が外出する際は、「パパ! パパ!」と呼びかけて小さな手で父親の服を引っ張った。
食べ物を与えられず、みるみるやせ細っていった息子の様子について、斎藤容疑者はこう自供している。
「理玖はガリガリになってしまった。やせた経緯がわかってしまうのが怖くて、病院に連れていけなかった。この状態が続くと、死なせてしまうかもしれないと思った」
遺体発見時、6畳間の和室にはパンやおにぎりの食べかすが散乱していた。極限の空腹状態にあった理玖くんはそれらを口にできなかった可能性が高い。元東京都監察医務院長の上野正彦氏が解説する。
「5才の子供なら生存本能があり、部屋に閉じこめられても『お腹がすいた』と必死になって食料を探すはずです。ところが食べ物や飲み物を摂取しない状態が続くと低血糖になり、体を動かすエネルギー源が不足して脳の働きや思考能力が低下します。そのため、泣き喚いて助けを求めたり、手の届く範囲にある食べ物を食べたりすることさえできなくなります」
斎藤容疑者が最後に生前の理玖くんを見たのは、死亡に気づく1週間ほど前だった。捜査関係者によれば、その時、理玖くんは横になったまま立ち上がることもできず、か細い声で救いを乞うように「パパ…、パパ…」と口にしたという。その言葉を聞いた斎藤容疑者は怖くなり、1時間も経たないうちに家を出た。
衰弱して何も食べられなくなった理玖くんは見るも無残な状態になってゆく。
「体力がなくなり衰弱すると免疫力が低下し、肺に水や膿が溜まって肺炎になります。また、何も食べないでいると、胃の消化液が空っぽの胃壁や腸壁の粘膜を消化し、血液と混じってどろどろと黒ずんだ茶褐色の便が垂れ流しになります。外見はやせ衰え、骨の上に皮がくっついている状態になり、子供なら絶食開始から4~5日で死にいたります。5才半の平均体重は20㎏程度ですが、死亡時は体重が半減するほどやせ衰えていたはずです」(前出・上野さん)
※女性セブン2014年6月26日号