「2015年に朝鮮半島で武力衝突が起こる可能性がある。いつでも戦争できるよう万全の準備をするように」
今年頭、北朝鮮の金正恩第一書記が朝鮮半島有事への備えを軍幹部に訓示していたことを3月26日付の『朝鮮日報』が報じた。北は今年に入り4度目の核実験をちらつかせて米韓に揺さぶりをかけており、軍艦艇をたびたび黄海上のNLL(北方限界線)南側に侵入させるなどの挑発を繰り返している。
金正恩が朝鮮半島武力統一の野心を抱き続けていることは明らかで、尖閣紛争が南侵の引き金になる可能性は十分にある。早稲田大学国際教養学部教授の重村智計氏は次のように分析する。
「北は南北武力統一に中国を巻き込みたいと考えている。尖閣紛争が起これば、北は中国支援の姿勢を鮮明に打ち出し、日米の作戦を妨害する動きに出るでしょう。同時に韓国への挑発をエスカレートさせる可能性があります」
重村氏が続けて解説する。
「北は日本に浸透した工作員を動員し、佐世保や呉にいる自衛艦隊の陣容や出港時間を逐次、中国側に知らせるはずです。自衛隊や在日米軍の動きが掴みにくい中国にとって、北の工作員から提供される情報は大きなプラス材料になる」
韓国への挑発行為をエスカレートさせるのは、韓国側の報復攻撃を誘発し、南侵のきっかけを作るためだ。重村氏が続ける。
「北が『韓国が過剰な報復攻撃を仕掛けてきた』との口実で南侵に踏み切り、中国の軍事支援を得ようとすることが考えられる。38度線付近の基地や離島への砲撃に対し米韓軍が大規模反撃を開始すれば、軍事同盟を結ぶ中国は北をバックアップせざるを得ない」
半島有事の際、米韓軍は圧倒的な航空兵力で空爆を加えて平壌を制圧するシナリオを描いているが、万一、中国軍が平壌に進駐する事態となれば戦況は大きく変わる。北が在日米軍基地をミサイル攻撃する可能性もあり、米軍と作戦を共にする日本も当然、北の標的になるはずだ。
※SAPIO2014年7月号