運転手が集まれば決まって出るのが、「自分が乗せたトンデモ客」の話題。ベテラン運転手たちが赤裸々に語る困った方々の実態とは──。
法人Aさん(50代、同23年):我々も同じ人間だからね。でも運転手に恨みでもあるのか、やけに攻撃的な人がいる。ちょっとムッとして反論すると、すぐに「近代化センター(現・東京タクシーセンター)にいうぞ!」なんていい始める。
法人Bさん(60代、運転手歴30年):参っちゃうよね。苦情がいけば会社に連絡が入り、サービスに問題ありとの烙印を押されかねない。
タクシーは各事業者単位で優良-B-Cでランクづけされていて、接客態度などを元にセンターが決める。優良ならお客を捕まえやすい乗り場(有名ホテルなど)に行けるから収益に直結する。
法人Cさん(50代、同15年):ただ「センター」の一言が水戸黄門の印籠のように考えている人もいるが、それは間違いです。最近は車載カメラのおかげで、タチの悪い客には対抗できるようになった。言いがかりをつけられた証拠になるからね。
A:もちろん、本当に悪質な運転手は通報してほしい。確かにお客さんに迷惑をかける悪いドライバーもいますから。例えばお客さんが酔って寝ていると見るや、環状線を一周してメーターを稼ぐとかね。そういう者は通報されても仕方ない。
D:悪質行為や事故を繰り返すのは、大体同じ人物なんだよね。実はそういう運転手はクビになると、なぜか関東のX県に流れ着いている。だからその県は、運転手の質が悪いと業界では有名(笑い)。
B:クレームという意味では、「急いでくれ!」ってお客さんと揉めることも多いね。こちらもできるだけ努力はするけど、実はかかる時間はあまり変わらない。それで遅れて、舌打ちされたりするとガッカリくる。
A:少なくとも都内は、法定速度通りで行ったほうが信号の繋ぎが良かったりしますよね。飛ばしたほうが、かえって赤信号に捕まりやすい。でも急いでいるふりをしないと怒り出す人が多いんだよなァ。それで降り際に「お前の顔は覚えたぞ」とかいわれても……。
※週刊ポスト2014年7月4日号