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企業の海外移転と法人税率「ほとんど関係ない」と大前氏指摘

 安倍政権の新成長戦略で本格的に打ち出されるとみられる「法人税減税」。だが、政府が現在検討している「20%台後半」は香港やシンガポールなどアジア諸国と比較しても勝負できるレベルではなく、全く成長につながらないと大前研一氏は指摘する。

 * * *
 法人税率を下げれば日本企業の海外移転を止められると安倍政権は言うが、それも誤解だ。
 
 企業が海外に出ていく理由は2つしかない。1つは「製造拠点にする」ことだ。その要件は、ある程度のスキルを持った人材の人件費が安く、産業インフラがそこそこ整っていて、外国企業の進出に政府の理解があるということである。
 
 それらの要件を満たす場所を求めて、たとえばイギリスのヨークシャーとランカシャーで花開いた繊維産業は19世紀前半にアメリカのニューイングランドに行って南のアパラチアに移り、その後は太平洋を渡って日本、韓国、台湾を経て中国にたどり着いた。現在では中国の人件費も高騰し、最先端のアパレル企業はバングラデシュ、さらにはエチオピアまで行っている。

 いま中国の人件費は月5万円を超えてきているが、バングラデシュは月4000円。エチオピアは月2500円くらいである。繊維のような労働集約型産業は、人件費に20倍の差ができると次の国に移っていくパターンが繰り返されている。

 国外に出ていくもう1つの理由は「新たな市場に進出する」ことである。いま日本企業が続々とインドネシアに進出している理由は、製造拠点としてよりも成長・拡大する中間層の市場に大きな魅力があるからだ。

 つまり、企業の海外移転と法人税率はほとんど関係がないと言える。そして企業の拠点は、ひとたび出ていったら戻ってくることはない。これもあらゆる国の歴史が証明している事実だ。

※SAPIO2014年7月号

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