人気メニューだった牛レバ刺しが焼肉店から姿を消して約2年、厚生労働省がまた暴走を始めた。代用品として人気を集めている「豚レバ刺し」をも新たな規制対象と決めたのである(実施時期は未定)。
厚労省は豚レバー規制にあたり、「過去10年間で豚生レバーが原因と考えられる5件の食中毒が発生した」と主張している。しかし、そうした「数の論理」でいえば、この規制の根拠はもっと怪しくなる。
「平成25年食中毒発生事例」(厚労省調査)によれば、昨年は全国で931件の食中毒が発生している。患者として病院などで処置を受けたのは2万802人だ。
このうち豚レバ刺しが原因のものは2件・8人しかいない。
他の食品による食中毒と比較しても多いとはいえない。食中毒のうち、最も多いのは鶏肉(生食)で34件・200人。上位は、きのこ類34件・138人(うち死者1名)、サバ29件・68人、ヒラメ23件・233人、生カキ21件・159人と続く。他には、牛肉(加熱処理)が9件で147人、貝類も6件で451人の患者が出た。
豚レバ刺しの消費量はこれらの食品よりもかなり少ないが、それを勘案しても豚レバ刺しが必要以上に“凶悪犯”扱いされた感は否めない。
本気で食の安全を考えているという理屈を通すのであれば、厚労省はきのこや貝類も対象にしてしかるべきだし、寿司やステーキ、鳥刺しだって規制しなければおかしいはずだ。ある畜産業者がいう。
「レバーなら、数ある肉の部位のひとつなので、畜産業者の不満を抑え込めると厚労省は踏んだのでしょう。もし貝類やきのこなどを規制することになれば、漁協や農協を完全に敵に回すことになる。
結局、やりやすいところだけを規制し、“対策はちゃんとやってます”とアリバイ作りしたことが透けて見えるから腹立たしい。今後は鳥など別の動物の臓物や、センマイ、ハラミなど他部位の臓物へと規制が広がっていかないか心配です」
※週刊ポスト2014年7月11日号